「鉛筆1本+傘1本=2本」という足し算は正しいか 小1レベルの足し算も教えるのは本当に難しい

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算数から数学へと学んでいくことは、1つの大きな物語を体験していくことです。物語は、1つの章を読み、次の章へとつながっていきます。その中の一部分を細切れに暗記しても意味はありません。

ところが、数学を学ぶときは得てしてこのような事態になりがちなのです。

ついつい目の前の問題を解くことに懸命になるうちに、最も大切な数学の世界を見通す機会を失ってしまいます。本来冒険者である子どもにとって、意欲を持てるような状況ではありません。

しかし、気づきを与えることができれば、数の世界はとても興味深くスリリングなものであることがわかるはずです。

文系だって数学の「世界」を学び直せる

さて、ここまで読まれて「たしかにそうだったかも」と思われる方も多いでしょう。そして、数学が得意とはいえないためにいわゆる「文系」の道を選択した人が多いと思います。

そして、いまビジネス環境が急速に変化する中で、あらためて数学を学び直したいという人も多いでしょう。

また、お子さまには「算数・数学嫌いになってほしくない」という気持ちの方も、多いと思います。

もちろん、学び方はさまざまでしょうが大切なのは、数学の世界を物語のように捉えようとすることです。もちろん、問題を解くことに挑戦するのもいいかもしれません。しかし大切なことは、広い視野で数学の世界を俯瞰して、物語を読むようにして体験していくことです。

そして、物語は「話す・書く」ということから始まります。

数学を「解く」だけではなく、その世界をじっくり味わってみてはいかがでしょうか。ご自身はもちろん、お子さまの学びにも役立つことと思います。

曽布川 拓也 早稲田大学グローバルエデュケーションセンター教授

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そぶかわ たくや / Takuya Sobukawa

1992年慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了。博士(理学)。高校数学教員を経て岡山大学教育学部に21年間勤務の後、2014年4月より早稲田大学グローバルエデュケーションセンター教授。研究分野は函数空間論、実函数論、数学教育。専門の数学を講じるほか、高校まで数学を十分に学んで来なかった学生のための、単なるリメディアル教育を超えたフルオンデマンド講義「数学基礎プラス」シリーズの一翼を担う。一方で「ロジカルシンキング入門」「英語と数学の読み方」といった講義も担当し、「論理」「英語」「データサイエンス」「情報」などが日本人の一般教養になることを目指す。

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