野口聡一が宇宙に「サバ缶」を持ち込んだ背景事情

メイドインジャパンの食や衣服の技術伝える契機

(写真提供:NASA/ZUMA Press/アフロ)
2021年5月、民間の「スペース X 」社が開発した宇宙船で宇宙へ行った初めての日本人として地球に帰還した野口聡一さん。地上から400km離れた宇宙での滞在中、野口さんは毎朝地上から指示を受けて仕事をこなしていました。それは、まさに "究極のテレワーク"。国際宇宙ステーションは、"究極の職住接近" だと話します。『宇宙飛行士 野口聡一の全仕事術』から一部抜粋・再構成してお届けします。

宇宙で好評だった「サバ缶」

仲間との距離をグンと近づける絶好のイベントといえる食事は、実は、最良の文化紹介の場でもある。食事こそ文化。各国のクルーたちはお国自慢の食べ物を持ち寄ってくる。わたしも負けじと、数多くの「日本食」を地上から持ち込んだ。

後から貨物船で送られてくる果物や野菜のような生鮮食品を楽しむことはあるが、基本、長期間保存できる宇宙食がメインになる。宇宙食というのは、調理法が決まっている。フリーズドライの食品にお湯や水を注ぐか、レトルト食品や缶詰を温める。それでも宇宙食は300種類以上にも及ぶ。

わたしが紹介した「日本食」のなかでも好評だったのは、福井県の若狭高校海洋科学科が12年をかけて研究開発した「サバ醤油味付け缶詰」(Canned Mackerel in soy sauce)。

味を感じにくい無重力下でもうまさを堪能できるよう、濃いめの醤油味に砂糖で甘みを調整して風味を出していた。生臭さも感じない。さらに食べるとき、宇宙船内に水分が飛び散らないようにくず粉を使い、煮汁に絶妙な粘度をつけてあった。

宇宙食を飽きさせないためには、バラエティーさが大事。普段ステーキばかり食べているアメリカ人でも、サバ缶のようなシーフードをバランスよく食べると、栄養面ばかりか、精神的にもいいようだ。

これは地上のみなさんにも紹介したいと思った。ユーチューブチャンネル「Soichi Noguchi」の初回番組で〝食レポ〟風に紹介したところ、「缶を開けた瞬間大惨事になりそうだけれども汁気があまりない」「サバ缶食べたい」と反響を呼んだ。

若狭高校のサバ缶をはじめ、JAXAが定める認証基準をクリアした「宇宙日本食」は47品目にのぼる。常温で1年半以上の保存が利くことや、液体や微粉が飛び散らず、容器や包装には燃えにくい素材を使うように要求される。

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