野口聡一が宇宙に「サバ缶」を持ち込んだ背景事情 メイドインジャパンの食や衣服の技術伝える契機
わたしのようなB級グルメ好きのおじさん世代には、「ホテイやきとり(たれ味)」(ホテイフーズ)。宇宙船内は禁酒なのが残念だが、カップ酒片手にいただきたいレジェンド食品だ。何といっても、とろみが絶妙なのだ。たれにとろみを利かせようとデンプンを多くすると味がぼやけるところを上手に味付けしてあり、白いご飯と一緒に食べたくなった。手軽な「わかめスープ」(理研ビタミン)はパックにお湯を注ぎ、ストローで吸って味わう。日本食の持つダシのうま味は宇宙生活に欠かせなかった。
わたしが宇宙に行くたびにお世話になっている「レトルトビーフカレー」(ハウス食品)は、市販のレトルトビーフカレーの「中辛」をさらにスパイシーな味にアレンジしてある。これはアメリカ・ロシア両国クルーから「カレーといえば日本製だ」と大好評だった。今回も地上から大量に仕入れてきたが、多くはクルーへの贈答用に回った。
代わりにフォアグラをもらったり、キングサーモンをもらったりする。食の文化交流始まりである。アメリカ人はスイーツが好き。フルーツケーキやチョコレートなどを自分へのボーナスフードとして持参し、わたしにもお裾分けしてくれたものだ。
3度目の宇宙飛行で初めて出会った「調味料の達人」
クルードラゴンの仲間ビクター・グローバーは、宇宙飛行士としては新人だったが、食事の時間になると食のスペシャリストとして活躍してくれた。
ほかのクルーが、ステーキやチキングリルの封を開けて、「あ、これ、うまいよね」と食べ出すと、ビクターは「う~む」と考え込む。そして「その肉にはこちらのソースをかけるとうまいんじゃないかな」と言って、お目当ての調味料を取り出してくる。実際に食べてみると、それはもう、絶妙な味になっている。わたしは、3度目の宇宙飛行で初めて「食」の才人に出会うことになった。
それからというもの、ビクターが「う~む」とうなると、ほかのクルーはじっと彼の結論を待つようになった。そしていきなり「これにはゆず胡椒が合う」などと日本人顔負けの調味料を持ち出し、わたしを驚かせた。こうなると、負けられない。地上から醤油を2種類持参してきたわたしは「こっちの醤油が合うよ」とみんなにアドバイスするようになるのだから、食卓が盛り上がらないはずがない。
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