「GAFAを敵視する人」に欠けている未来的な思考 25年後にGAFAが残っているか考えてみよう

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つまり、競争という点では、規制は独占状態をかえって悪化させると言えます。これまでは、独占状態によって製品価格などが上がって消費者に害が及ぶことが懸念されてきましたが、現在の独占状態では、ネットワーク効果により、消費者に害は及びません。逆にすべてのものが安くなり、消費者は得した状態になってしまう。現在の独占状態により懸念される問題は消費者ではなく競争であり、規制が実際には競争状態を悪化させるという点です。

「独占」という言葉の再定義が必要だ

規制はすべてを公平にするためのものですが、その恩恵にあずかれるのは主に消費者です。競争を促進するための規制なのに、そういう問題点は曖昧なままです。

確かに競争条件を担保するような革新的な規制もあるかもしれません。1970年代から論議された世界最大の電話会社だったAT&Tの分割は、もともと競争を増すために行なわれたものであり、実際この決定は競争を促したと言えます。

電話会社を乗り換えても番号をそのままにできる番号ポータビリティのシステムも、競争を促すためのものです。自分の電話番号を他の業者のサービスでも使えれば、携帯電話会社の乗り換えが容易になります。それ以前には番号を変えなくてはならなかったので、他業者に乗り換える人はいませんでしたが、この規制が新たな競争を生んだことになります。

ですから、競争に役立つ規制があることも確かです。しかし、少なくともアメリカでは、独占という思想は消費者に向いたものなのです。ですから、競争自体の弊害について考えるよう、発想を転換しないといけないでしょうね。つまり独占という言葉を再定義しなくてはならないということです。

にもかかわらず、アメリカでは司法省がデジタル業界の市場に対して、フェイスブックやグーグル、アマゾンなどが競争状態に反する行動をしていないかと調査を始めています。政府による反トラスト法に関する動きはいつでも後手ですね。政府は手遅れになってから初めて動き出すのです。つまり、いまさら手を出す必要はなくなっているということですね。

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