「GAFAを敵視する人」に欠けている未来的な思考 25年後にGAFAが残っているか考えてみよう

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いま起きている独占は非常に一時的なものなんです。ARのような新しいテクノロジーが出てくるので、長くは続かないでしょう。現在は「自然独占」(複数の企業で生産するよりも1社で生産した方が効率的な場合に、自然に起きる独占)が起きていますが、これは長続きしません。そして一般的には、アメリカの政府が興味を持つのは、それらがピークを迎えてからなんですよ。

次のトレンドが起き始めて、前の時代に支配していたものを追い出し、スマホのようなものが次のものに代わるのに十年単位の時間がかかります。マイクロソフトやAT&Tの動きも数十年かかりました。

ですから司法省が口を出しても、来年解決というわけにはいかず、10年はかかります。そして10年経って問題が解決された時点では、その規制はまるで効果のないものになっているのです。規制と直接関係のない何かが、自然にそれらを追い出してしまうからです。

巨大企業を解体しても何も解決はしない

それに私が指摘したように、当事者が目指すものが変化して独占の定義自体も変化してしまい、対処するのは非常に難しくなるのです。それに変化の速度はものすごく速いので、効果は不十分なものになってしまいます。

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巨大企業を解体しても何も解決はしません。こういう話はフェイクニュースと同じで、それを追い散らしてもなくならないし、何の影響も与えません。それを治癒するカギは人々が文句を言っている部分にはなく、一見効果がなさそうなところにあります。解体して傷つけるより、彼らが目指しているものと違う解決法があるなら、それを早めに行なっておく方に意味があるかもしれません。

問題は、大きければ大きいほど得するという「ネットワーク効果」に対して、十分対処できる効果的なツールがないことです。あるものが良くなってほしくない、と主張するのは非常に難しい話です。何かをより良くしないよう元に戻してほしい、と言うようなものですからね。

ですから昨今、大きいことに対して皆がアレルギーを起こしているのは、間違っているし誤解だと思います。大きいことはいいことでありうるのに、大きいということ自体がともかく嫌いで、何でも悪だと言う人がいますが、やみくもに反対するべきではないと思います。

(聞き手:大野和基)

ケヴィン・ケリー 編集者、著述家

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Kevin Kelly

1993年に雑誌『WIRED』を共同で設立、創刊編集長を務める。これまでにスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾスなど、数多くの起業家を取材。現在は、『NYTimes』や『Science』などに寄稿するほか、編集長として毎月50万人のユニークビジターをもつウェブサイトCool Toolsを運営。主な著書に『テクニウム』(服部桂訳、みすず書房)、『〈インターネット〉の次に来るもの』(服部桂訳、NHK出版)など

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