落葉隻語 ことばのかたみ 多田富雄著

落葉隻語 ことばのかたみ 多田富雄著

脳梗塞の後遺症で右半身が麻痺し、しゃべることもままならなくなった国際的免疫学者のエッセー集。左手でキーボードをぽつぽつたたきながら仕上げるのもさぞ大変だったろうが、末期がんも含めた闘病のつらさは筆舌に尽くしがたいものがあったと思われる。そして死の直前までつづった文章の数々はまさに遺言と呼ぶにふさわしい。

繰り返し言及されるのは、リハビリ日数の制限という血も涙もない政策により見捨てられたリハビリ「難民」であり、療養病床の削減など数々の「棄民」政策である。いつから日本はこんなに冷たい国になってしまったのか。著者が取り組んだ患者救済運動も厚生労働省は歯牙にもかけない。

民主主義にもとる数々の現象への厳しい指弾もさることながら、折々の自然や文化、社会にまつわる話題はみなほのぼのとして味わい深い。「若い医学者たちへのメッセージ」は示唆に富み、ほかに能をめぐる数編も収められている。(純)

青土社 1680円

  

ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • Amazon週間ビジネス・経済書ランキング
  • 日本と中国「英語教育格差」
  • コロナ後を生き抜く
  • ソロモンの時代―結婚しない人々の実像―
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
香港問題めぐり米中激突<br>加速するデカップリング

6月30日、「香港国家安全法」が施行されました。「一国二制度」の下での高度な自治が失われたとして、西側世界と中国の対立は一気に深まっています。米中経済の分離は、サプライチェーンの見直しなど、グローバル企業にも大きな変化を迫りそうです。