落葉隻語 ことばのかたみ 多田富雄著

落葉隻語 ことばのかたみ 多田富雄著

脳梗塞の後遺症で右半身が麻痺し、しゃべることもままならなくなった国際的免疫学者のエッセー集。左手でキーボードをぽつぽつたたきながら仕上げるのもさぞ大変だったろうが、末期がんも含めた闘病のつらさは筆舌に尽くしがたいものがあったと思われる。そして死の直前までつづった文章の数々はまさに遺言と呼ぶにふさわしい。

繰り返し言及されるのは、リハビリ日数の制限という血も涙もない政策により見捨てられたリハビリ「難民」であり、療養病床の削減など数々の「棄民」政策である。いつから日本はこんなに冷たい国になってしまったのか。著者が取り組んだ患者救済運動も厚生労働省は歯牙にもかけない。

民主主義にもとる数々の現象への厳しい指弾もさることながら、折々の自然や文化、社会にまつわる話題はみなほのぼのとして味わい深い。「若い医学者たちへのメッセージ」は示唆に富み、ほかに能をめぐる数編も収められている。(純)

青土社 1680円

  

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