あらためて役割が問われる「何も知らない」社外取締役
社外取締役は何をしていた
心もとないのは、その間、同銀行の経営陣が事業変質を明確に把握していたのかどうかだ。
今回、経営陣の逮捕を受けて社長に就任した小畠晴喜氏(写真)は、社外取締役の一人として取締役会議長を務めていた。ところが、同氏すら業務上のメール削除などは何も知らなかったそうである。
現在、同銀行の取締役は全員が社外取締役だ。その中には、創立メンバーの一人で、設立準備時点では、東京JC(青年会議所)の理事長を務めていた平将明・衆院議員もいる。同氏はかつて、銀行参入に向けて「銀行の内部から銀行を改革する」と豪語していた。社外取締役の一人として、改革どころか、内部から朽ちていた事態に腐臭を感じなかったのか。
「日本一厳しいコーポレートガバナンス」という日本振興銀行の華やかな看板の裏側にあったのは、デタラメ経営だったと言わざるをえない。少なくとも、そう思われる事実が次々と判明してきている。
だが、同銀行に限られた問題として終わらせていいわけではない部分もある。他の企業の中にも、社外取締役の存在が問われるようなケースがあるからだ。「複数の社外取締役を兼任した人物が、多忙という理由から月1回の取締役会にも顔を出さない」「結局、社外取締役は社長の知人だらけ」等々、だ。
今回の出来事は社外取締役の役割、社外取締役の兼任制限などが厳格に議論される契機になってよい。アメリカでも社外取締役制度の運営をめぐり、報酬と責任の関係など議論が絶えない。
その国から輸入した制度を金科玉条のように持ち出して、コーポレートガバナンスの形式主義に陥っていないかどうか。経営トップの傍らを彩るだけの「何も知らない」雛壇のメンバーというのであれば、絵に描いた餅よりもたちが悪い。
(シニアライター:浪川 攻 =週刊東洋経済2010年7月31日号)
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