あらためて役割が問われる「何も知らない」社外取締役
資金吸収力を高めるため、定期預金の利率は通常よりも高く設定した。同銀行関係者によれば、預金集めの多くは電話勧誘で行い、その際には「(銀行が破綻しても)1000万円までの預金は国が保護します」という、ペイオフ制度を逆用するかのようなセールストークが用いられていた。
預金営業職員たちの評価体系は細かくランク分けされ、1ランク評価が上がると数千円収入が上乗せされる。通常の企業であれば、半年、ないしは1年置きに行われる業績評価が毎月、繰り返されていたという。馬の前にニンジンをぶら下げて疾走させたようなものだ。
職員たちは必死で預金セールスした。金融庁は5月27日発表の行政処分の中で、「預金・融資の勧誘に関する表彰制度の見直し」を命じている。さもあらんという話である。
一方、中小企業向け融資のほうはミドルリスクの困難さに直面したといえる。したがって、次第に小口融資の積み上げよりも、既存ノンバンクからのローン債権買い取りのほうに資金投入が行われるようになっていった。
そんな買い取り先の一つが経営破綻したSFCGであり、最終的にはローン債権の二重譲渡という問題が両社間で発生することになった。
こう見ていくと、日本振興銀行のビジネスモデルは発足から現在までの間に、大幅に変質していたということもできる。
中小企業向け専門銀行とは言いながら、自ら、審査したうえで与信するよりも、他社から巨額のローン債権を買い取るという、いわば、ファンド的なビジネスを預金を原資に積極化させていたのだから、そう見てもおかしくないだろう。