「老後2000万円あれば安心」信じる人の意外な盲点 「人と人の繋がり」見れば経済の本質がつかめる
この話は、年金保険料や税金が増えてしまう理由の説明に使われます。相対的に働く人が減ると、年金保険料を増やすか、税金を年金の支給に回す必要が出てきます。
1人ひとりに注目するなら、もちろんお金は重要です。現役世代にとっては、支払うべき年金保険料が増えれば、日々の生活が苦しくなりますし、高齢者にとっては、受け取る年金が減ってしまえば、やはり生活は苦しくなります。
ところが、先ほどのクイズのように、お金が力を持つのは働く人がいるからです。お金をどんなに増やしたところで、2050年になると1.3人の現役世代が働いて1人の老人を支えるという事実には変わりはありません。
たとえば、2050年において、十分な年金や預金がないと、高齢者の生活は苦しくなります。このとき、現役世代から集める年金保険料を増やせば、問題は解決しますが、現役世代の生活はもちろん苦しくなります。
高齢者全員が2000万円貯めたら「みんな幸せ」なのか
では、もしも、すべての高齢者が年金以外に十分な預金(2000万円)を蓄えることに成功したとするとどうでしょうか? このとき、現役世代も高齢者も十分なお金がありそうです。
ですが、お金が増えたところで全体として生産されるモノやサービス総量は変わらず、不足しています。物価は高くなり、現役世代も高齢者も少しずつ我慢することになります。もしくは、高齢者たちも働かないといけなくなっています。
つまり、社会全体を考えたとき、お金によってできるのは、「困る人」を変えることだけ。お金は全体の問題を解決するには無力なのです。
イス取りゲームを連想するといいかもしれません。これからイスの数がどんどん減っていきます。イスの数が減れば、「安泰な老後」というイスの価格は高くなります。周りの人がお金を増やせば増やすほど、さらにイスの価格は高くなります。
根本的に解決するには、イスを増やさないといけません。イスが増えないことには、2000万円貯めても、4000万円貯めても、イスを買える保証はどこにもありません。
このイスが示すものは、将来の生産力です。よほど生産効率が上がらない限りは、子どもを増やすしかありません。
1970年頃、1人の老人は8.5人に支えられていました。十分な年金を受給できてラッキーだったように思えます。
しかし、彼らにはお金の流れでは見えない負担もありました。それは子育てです。「1人の子どもを何人の現役世代が支えるか」という視点で見ると、まったく違う現実が見えてくるのです。
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