デジタル画像が数億円!「NFTバブル」本当の正体 投資目的ばかり考える人に欠けた重要な視点

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事業者がこぞってNFTに取り組むのは、従来にはないマネタイズ手法を確立できる可能性があるからです。従来のウェブサービスにおける基本的なマネタイズ手法は主に「広告」か「有料会員」の2つでした。

これに対して、NFTによるマネタイズは純粋な商品販売の形態を取ります。この場合、企業はNFTの販売時に短期的なキャッシュフローを得ることが可能になります。実際にStar Atlasというゲームでは、ゲームのローンチ前にゲーム内で利用できるNFTを販売するという手法で多額の資金を調達しています。

仮に何らかのサービスをNFTに紐付ける場合であっても、ユーザーがアクセスする際にブロックチェーン上でNFTの所有の有無を確認するだけでかまいません。ユーザーの個人情報を管理せずともサービス提供が可能になり、GDPR(一般データ保護規制)などのプライバシー規制にも配慮できます。

コレクションの先にある利用価値がNFT普及のカギ

さらに、NFTからは自動的に手数料を徴収することが可能なため、転売や貸与といった2次流通を防ぐ必要もありません。むしろ、供給をコントロールしてプレミア感と販売単価を高めることや、シェアリングや2次流通を推奨しバイラルを広げ、さらにそこから手数料を得ることも可能です。

先述した「アクシー・インフィニティ」というNFTゲームの場合、ゲームプレイに必要なモンスターのNFTシェアリングを推奨し、短期間でユーザーの拡大に成功しました。

このように、既存のサービスとNFTを併用することで、企業は市場環境や顧客ニーズ、資金需要に応じて取りうる戦略オプションを大幅に広げることが可能となります。

NFTには確かに投機的に過熱するコレクションマーケットの側面があります。これはNFTの所有価値に重きをおいた考え方です。

しかしNFTの利用価値を中心に頭を切り替えると、そこには情報通信産業の新たなビジネスモデルやサービス体験を生み出す可能性が見えてくるはずです。

もしいまNFTの活用を検討されている方がいるならば、目先のトレンドとしてではなく、自社のサービスや顧客体験をNFTによってどのようにトランスフォーメーションしていくのかという視点から、NFTの用途を企画していくことをおすすめします。

森川 夢佑斗 Ginco代表取締役

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もりかわ むうと / Muuto Morikawa

1993年大阪府出身。京都大学法学部中退。大学在学中にブロックチェーンの研究開発事業を開始し、2017年12月に株式会社Gincoを創業。

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