Netflixとアマプラがぶち壊した「番組の国境」 あらゆる国の映像作品を現地の言語で楽しめる

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例えばNetflixが2023年12月に配信予定の実写版『幽☆遊☆白書』も、グローバルチームで取り組まれる。漫画を原作とするこの作品は、人間界、魔界、霊界を行き来する壮大な世界観を持ち、個性豊かなキャラクターやクリーチャーが登場する。「世界中のクリエイターネットワークを駆使してVFXを練り上げる。制作期間が長いのは、オリジナルのコミックに登場する表現をVFXで効果的に見せるために丁寧に作り込んでいるからです。SF世界を丁寧に描くには、どうしても予算と時間がかかります」と坂本氏。

そして品質を上げ、グローバル品質に仕上げて配信することで海外でも観てもらえる作品になるという。

「3年前、『全裸監督』が公開された後、LA滞在中にホテルのバーで居合わせた映画監督と会話しているとき、日本の映画・ドラマプロデューサーだと言うと、『全裸監督』は観たほうがいいと勧められ、驚いたことがあった」と、坂本氏自身が驚きの体験。そこで気付かされたのは”日本感の追求、日本でのクリエイティブを突き詰めること”が、グローバルで戦ううえで重要ということだ。

こうした考えは日本でのパートナーとも共有できるようになってきているというが、さらにこれから作品を生み出していく若い世代を発掘することにも着手し始めた。

『万引き家族』や『誰も知らない』といった作品で知られる是枝裕和監督とは映画、連続ドラマの制作で手を結んだ。映画はかつてない大規模予算で進んでいる一方、連続ドラマは全体のプロデュースを手掛けつつ、数話を自ら監督する一方で、若手映像クリエイターを起用してエピソードを作っていく。

Amazonプライムビデオの強み

一方、Amazonプライムビデオはこれまで『バチェラー』『バチェロレッテ』といった恋愛リアリティショー、海外での現地制作が急増中の『ドキュメンタル』シリーズなどがヒットしてきた。映画、連続ドラマの自主企画制作作品を準備しているが、6年間取り組んできたNetflixに追いつくには少し時間がかかるかもしれない。

しかし企画する作品の幅広さという意味では、Amazonプライムビデオのほうが上だ。

日本市場向けに版権を取得、自主制作した音楽バラエティーショー『ザ・マスクド・シンガー』は、日本の一般的なバラエティ番組とはレベルが異なる予算をかけて製作されていることがうかがえる。

明確な数字は公表していないが、出演者はもちろん、観客に対しても徹底したPCR検査を実施し、大規模シアターを長期間貸し切りで撮影。さらに出場者となる12人のセレブ全員が、決勝まで残ることを想定して、半年もの準備期間をかけて演出を決め、歌とダンスのトレーニングを受けて撮影に挑んだ。

『ザ・マスクド・シンガー』(写真:Amazonプライムビデオ)

セレブに付き添うマネジャーも顔を隠して会場入りし、会場内の動線も完全に分離する徹底ぶりで、予定調和のない”ガチの”ライブパフォーマンスバトルを勝ち抜いていく。

もちろん、予算の大きさや演出の派手さと面白さが比例するわけではないという意見もあるだろう。しかし、ここで注目したいのは”お金の流れが変化しただけ”ということだ。かつて邦画黎明期に映画にお金が集まり、テレビの発達とともにテレビ局がクリエイターたちを集めた。

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