「犬の帝王切開」を無資格で重ねた悪徳業者の鬼畜 「ペットの命を蔑ろにする業者」が減らない事情
獣医療行為である「ワクチン接種」を無資格で行っているブリーダーもいます。
数年前に取材した福岡県の犬のブリーダーのAさんは、「まとまった量だと安価で購入できるし、動物病院へ行く手間も省けるからね。経費削減のためにそうしているブリーダーは多いよ」と話していました。
仲の良い獣医師からワクチンと注射器を分けてもらい接種しているようでした。無資格で獣医療行為をするブリーダーはもとより、それを譲渡する獣医師にも問題があります。
今年5月には東京都のペットサロン経営者が無資格で犬にワクチンを接種し、獣医師法(診療業務の制限)違反の疑いで逮捕されています。ワクチンの入手先は医薬品卸売り販売会社だったことから、悪徳ブリーダーとの間にそうした癒着があることも推察されます。
こうした違法行為を繰り返すなど、ペットの命を蔑ろにする悪徳ブリーダーを撲滅するにはどうすればよいのでしょうか。
なぜ今まで逮捕できなかったのか?
冒頭の逮捕された犬販売業者(ブリーダー)は、約940匹もの繁殖犬を抱えていました。
管轄の保健所の職員は、「今回の事案を重く見て、他の業者に対する立ち入り監視も実施する」と話していましたが、未然に対応できなかった自治体の管理体制にも問題があります。
自治体はこの業者に今年4月までの4年間にわたり9回もの立ち入り検査を行っていましたが、「明らかな法律違反が認められなかった」として業務停止などの処分を見送っていました。これまでは飼育環境等に対して明確な基準がなく、それが法の抜け道となっていたのです。
4月に定められた数値規制は「悪質な事業者を排除するために、事業者に対してレッドカードを出しやすい明確な基準とする」ことを主な目的としています。
明確な基準ができることで、自治体も法律違反として処分がしやすくなります。ただし、悪徳ブリーダーを撲滅できるかどうかは、自治体の管理がどこまでできるかにも左右されます。事業登録は5年ごとに更新されますが、従来であれば何もなければ自治体が訪ねてくるのはその更新時だけでした。
数値規制の完全施行は、2024年6月を予定しています。その目的を遂行するためも、自治体がすべての事業者の飼育施設を内見し、その後も抜き打ちで審査することも必要です。
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