コロナ禍の中「遠距離のまま結婚」した2人の本音 30代後半の2人は、こうして結婚を決断した

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「いわゆるマリッジブルーですね。この人でいいのか? という迷いではありません。誰かと一緒に住むことへの漠然とした不安です。環境が大きく変わるし、いずれ嫌になったりしないかと思ったりしました」

美樹さんをさらに不安定にさせた要素がある。進さんとの結婚に賛同してくれたはずの母親まで「マリッジブルー」になってしまったのだ。

「長女である私は、母にとっては親友であり自分の一部なのだと思います。それを進さんに取られてしまうのが寂しいのでしょう。結婚に反対はしていないけれど、チクチクとした言葉で突っかかってくるようになってしまいました」

ここで、筆者と一緒にお見合い支援の活動をしている婚活パーソナルトレーナーのマチコ先生がアドバイスしてくれた。自身が女子校育ちの一人娘にして晩婚であるため、母親との濃すぎる関係性は嫌というほど知っている。

「これから一緒に生きていくのは進さん」

「母親ってそういうものよ。黙って受け止めるしかありません。でも、美樹さんがこれから一緒に生きていくのは進さん。彼のほうを大切にしてね」

他人とITの力も借りて結ばれた2人。新居にはまずは進さんだけが住んでいる。来年春からの同居が待ち遠しくて仕方ない進さんに対し、美樹さんのほうは「遠距離の良さもある」と正直に語る。

「普段は会えないからこそ、会えることのありがたみも感じられます。進さんにメールするのも毎日の楽しみです。コロナで2カ月も直接会えない時期があってもなんとかやって来られたので、今後の結婚生活も大丈夫かもと思っています」

浮かれている進さんも、夫婦間のコミュニケーションについては離婚という失敗からの教訓がある。ささいなことでも「ありがとう」「ごめんなさい」を言うことだ。そのおかげなのか、美樹さんも共同生活への不安を払拭できつつある。

「まだ一緒に暮らしていないので結婚した実感はありません。でも、何かあったときに味方になってくれる人がいるという安心感はあります」

コロナ禍は明らかに悲劇だ。でも、それを試練としてお互いに思いやり、愛情を静かに育んだ2人もいる。厳しい船出を乗り越えれば、固い絆で結ばれた豊かな航海ができる気がする。

本連載に登場してくださる、ご夫婦のうちどちらかが35歳以上で結婚した「晩婚さん」を募集しております。事実婚や同性婚の方も歓迎いたします。お申込みはこちらのフォームよりお願いします。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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