街づくり「できるだけ小さく」始めるのがいい理由 まずは空き地に「ベンチ1つ」置くだけでいい

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ニーズや欲求を土台にした課題の抽出と、そこから見いだされるソリューション、さらにはターゲットの具体的な設定は、アクティビティーファーストを進めていくにあたり大いに役立ちます。そうした作業から、小さな一歩を踏み出しましょう。

そこでまずやるべきことは、「自分はどうしたいのか?」。これを考えてみることが大切です。自分がどのエリアでどんなまちづくりをしたいのかを掘り下げるべく、これから実践するまちづくりのコンセプトを検討してみるのです。

この作業はコンセプトづくりといってもいいかもしれません。いずれにしても、自分が主導的に行動し、後に関係者を巻き込んでいく必要がある以上、メッセージ性と共感性をともに含んだテーマないしコンセプトを考え、言葉にしておくべきです。

静岡県沼津市の例

コンセプト設定とその一貫性ということでいえば、静岡県沼津市の元市長・大沼明穂さんが行ったまちづくりは、非常によい事例だと思います。
もともとIT企業の経営者であった大沼元市長は、2016年に「沼津を変える」をスローガンとして掲げ、市長選に初出馬。現職に2万票近い大差をつけて初当選を果たしています。選挙戦では「IT企業を誘致して若者が働く場をつくる」を公約としていました。

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そんな大沼元市長が行ったのが、静岡県沼津市を舞台とするスクールアイドルアニメ『ラブライブ!サンシャイン‼』によるまちおこしです。彼は沼津をラブライブのまちとして大々的にPRし、ラッピングバスの活用や作品に登場する声優のグループをPR大使に任命するなど、数々のタイアップ企画を展開しました。コアなファンの中には「何度も通うより住んだほうが安い」と、移住した人もいたほど。

公約にもあるように、もともと大沼元市長は若者に寄り添う姿勢をもっていました。つまり、沼津というまちを活性化させるために若者を呼び込むという、明確な「何をしたいのか」「なぜしたいのか」があったため、強力なコンセプトを打ち出せたのです。

残念ながら大沼元市長は2018年3月に小脳出血で亡くなられたのですが、直前まで公務の準備をしていたなど、沼津に対する思いはとても強かったようです。そしてその「自分はどうしたいのか」という気持ちが、まちづくりを成功に導いています。

この“小さくはじめて大きく育てる”ノウハウは、まちづくりだけでなく、ビジネスマンや中小企業、個人事業主にとっても大きく役立ちます。ぜひ、活用してみてください。

小林 大輔 株式会社SUMUS(スムーズ)代表取締役社長

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こばやし だいすけ / Daisuke Kobayashi

法政大学経営学部経営学科卒。経営コンサルティング会社を経て独立。
2015年、株式会社SUMUSを創業。住宅メーカー、リノベーション会社を中心に経営コンサルティングを行い、500社以上のクライアントをサポート。

地域そのものをリノベする「まち上場」を実現させるコンサルティング案件が多く、サービス継続率は96%と高い実績がある。しかも扱う地域は、大都市圏どころか県庁所在地でもなく、カネ、人、知名度が決して潤沢とはいえない地域ばかり。

現在は2社の代表と複数の会社の社外取締役を務め、地域の担い手たちとともに、暮らす人、働く人、訪れる人に愛されるまちを全国の田舎でも積極的につくっている。

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