HV不在で販売苦戦「レヴォーグ」発売1年通信簿 発売直後は善戦するも1年が経過して停滞ぎみ

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レヴォーグの走行イメージ(写真:SUBARU)

この点を開発責任者に訊ねると、「レヴォーグのお客様は長距離移動される方が多く、また運転を楽しみたいとの期待もあり、ことに長距離移動に対してハイブリッド用のバッテリー搭載を行うと燃料タンク容量を確保するのが難しかった」との説明であった。

私は、3代目のプリウスに12年も乗っているが、今春新品のエコタイヤに交換したら30km/L以上の実用燃費で走って秋を迎えた。そして、スタッドレスタイヤに交換しても25km/Lで走り続けている。この燃費感覚からすれば、燃費性能が諸元数値でさえ半分でしかない新車がなお販売されていることに違和感を覚える。

今、もし私がレヴォーグを購入したら、同じように10年近くは乗り続けることになるだろう。2030年になったとき、周囲を走っているほとんどのクルマは、ハイブリッド車以上になり、EVの台数もより増えているに違いない。そうした時代に13km/Lほどの燃費でしかないガソリンターボエンジン車に乗ることがどう映るのか、考えざるを得ない。

レヴォーグにも電動化の選択肢がほしい

人々が未来を思う時代となっている。ガソリンエンジン車をすべて否定するわけではないが、少なくともスポーツカーではなく、乗用車を選ぶなら電動化や排出ガスゼロへの意識は今後もっと高まっていくことが予想され、ランニングコストの面でもガソリン価格より電気代のほうが圧倒的に有利となっていくだろう。また運転の楽しさも、モーターでも十分に、あるいはより以上味わうことができる。「電気はつまらない」という誤解が、こうした商品企画を進めさせてしまうのではないか。

2022年発売予定のスバル初となるグローバルEV「ソルテラ」。写真はプロトタイプ(SUBARU)

来年、ソルテラを発売するスバルには、ただEVを出せばいいというだけでない現実に早く気付いてほしいものだ。スバル愛好家は、すでにそこに気付いているのではないか。それがレヴォーグの販売台数に表れている気がしないでもない。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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