マツダ、自ら「魂」と呼ぶロードスターを投入 10年ぶりフルモデルチェンジにかかる期待

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熱心なロードスターファンがシャッターを切る

熱心なファンも多いロードスターだが、マツダにとっても、自らの魂と呼ぶ特別のクルマだ。ロードスターは1980年代前半に、非公式プロジェクトとして開発がスタート。このとき掲げた「人馬(車)一体」という商品コンセプトは、現在のマツダ車全体の車両開発のコンセプトにつながっている。

当時、手掛けるメーカーもほとんどなく、「2人乗り小型オープンスポーツカーなど売れっこない」という声もある中、ロードスターは発売するや、世界中で大ヒットを記録する。特に欧米において、マツダのブランドイメージを高めることに大きく貢献した。

一方、日本では、バブル景気を背景としたマツダの5チャンネル戦略に基づき、新ブランド「ユーノス」の先兵として、「ユーノス・ロードスター」の車名で登場。車種としては成功を収めたものの、皮肉にも、マツダの経営危機を招いた無謀な拡張路線の幕を開ける車種となった。

 今度こそブランド力のアップを

会場外では懐かしの旧モデルも展示された

ヒットしたとは言え、そもそも販売台数には限界があり、商売にはならないロードスターだった。が、その後、繰り返された経営危機にあっても、廃止が取りざたされることはなかった。米フォード傘下で大規模なリストラをした際も、ロードスターだけは”触らない”のが、暗黙の了解だった。また、リーマンショックとその後の円高のときも、さすがにモデルチェンジの時期こそ延期を余儀なくされたが、中止されることはなく、10年ぶりの新型車投入にこぎ着けた。

過去、販売が停滞するたびに値引きや大口法人販売に走り、ブランド力を毀損してきたマツダ。だが、足元では無理な販売増を狙った値引きを抑制、さらに12年以降に発売してきた新型車がいずれも好調に推移するなど、ブランド力の改善が見られる。ロードスターはマツダを象徴するモデル。新型車には、販売台数そのもの以上に、ブランド力の一段のアップへの大きな期待がかかる。

(撮影:尾形文繁)

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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