住みたい街トップは、なぜ吉祥寺なのか
「市民目線から誇りが持てる街づくりへの機運が高まりつつある。また住民の満足度が地域社会を測る指標として重視されつつある。吉祥寺の人気はこれらの流れを先行的に反映しているのではないか」と池邊氏は指摘する。
人気街ゆえの負担・弊害も
しかし、人気の街は一般に地価やマンション賃料がハネ上がり、住みたくても住めない高嶺の花になってしまう傾向がある。
東京カンテイによれば、吉祥寺地区の新築マンションの平均坪単価は、00年代半ばまでは周辺の駅と比べても平均的な水準にあったが、07年から急上昇、08年には吉祥寺より都心寄りで利便性の高い荻窪、西荻窪を抜き周辺地区で最高値となった。東京カンテイでは「住みたい街ランキングの影響も少なくない」と見る。
住民にとって固定資産税や賃料の上昇は大きな負担増だ。不動産情報会社のネクストの調査でも、武蔵野市民の不満のトップに公的負担の高さが挙げられている。
また、人気の街ゆえの弊害も指摘できる。武蔵野市が作成した「吉祥寺グランドデザイン」では「居住需要を背景とした無秩序なマンション開発」や「公園等での利用マナーの低下」「地価上昇による商店街のチェーン店化でまちの個性消失」などへの懸念が示されている。
では、住みたい街に住むことは住民にとって本当に有益なのか。
前出の池邊氏は「これからの街は勝ち組と負け組がはっきり分かれる。そのカギは住民が握っている」と言う。