しかし、私自身は、(このときにはアメリカに滞在していたため、日本を外から見ていたのだが)、こうした動向に奇妙な違和感を抱いていた。カリフォルニアの町を走る車も駐車場の車も、ほとんどがトヨタ車であるのを見て、実に不思議だと感じた。日本では、しばらく前に衰退産業になったと言われていた重厚長大産業も息を吹き返した。そして、アメリカでは異常な住宅ブームが起きた。いったい世界経済に何が起こっているのだろうか?
ところで、日本経済が回復するにつれて、「円安維持は欧米企業の競争力を弱めている」という海外からの反発が生じてきた。そして、04年3月2日に、FRBのグリーンスパン議長が、日本政府の異常な為替介入に対し、「日本は大規模な円高阻止介入を続ける必要がなくなりつつある。最近の経済動向がそれを示している」と批判するに至ったのだ。
グリーンスパンによる介入批判
グリーンスパンの批判は、日本の介入が非不胎化介入になっているという点にある。
「不胎化、非不胎化」というのは、為替介入に関する基本概念だが、日常使われる言葉ではないので、簡単な説明を行っておこう。
為替介入で外貨を買うと、国内通貨量が増加する。これを相殺する金融調節を実施して為替介入後も通貨量が変化しないようにする操作を「不胎化」という。これに対して、増加した通貨量をそのまま放置しておくのが「非不胎化」だ。
円売り・ドル買い介入の規模は、03年初めから04年2月までの期間で、約30兆円にのぼった。他方で、日銀の量的緩和目標(日銀当座預金残高)は、この期間に30兆~35兆円に拡大された。このことから、欧米の市場関係者の間では、03年からの為替介入は、介入資金を市場に放置する非不胎化介入であると受け取られたのである。
グリーンスパンの批判も、「部分的な非不胎化介入は、日本のマネタリーベースの拡大手段である」という点にある。