弁護士が解説「NFTの取引」とはいったい何なのか NFTの「保有・移転」の法的意味とは?

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増田雅史弁護士(撮影:朝日新聞出版写真部・高野楓菜)
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2021年現在、NFTというワードが沸騰している。また、海外のみならず日本でも多くの企業がNFTビジネスに参画を表明。その背景には何があるのか。NFT(Non-Fungible Token=ノン・ファンジブル・トークン)の各ジャンルで活躍する28人の執筆者が最前線を解説した『NFTの教科書』から、一部を抜粋・再構成して3回に分けて紹介します。
第2回は本書の共同編集代表であり、デジタルコンテンツ、著作権、暗号資産に関する著作も多い弁護士の増田雅史氏と、同じく弁護士の古市啓氏がアートと著作権の関係を解説します。

1.NFTの関連当事者と法的関係

NFTとは、一般に、ブロックチェーン上で発行されるトークンのうち、トークン自体に固有の値や属性をもたせた代替性のないトークンをいいます。ビットコインなど、ブロックチェーン上で発行されるトークンは、通常、ひとつひとつに個性がなく、同じトークンが多数存在していますが、NFTは、ひとつひとつのトークンが固有の値をもち、他のトークンと区別できるという特徴を有しています。

この性質を利用して、本来は容易にコピーできるデジタルコンテンツをNFTに表章させることにより、デジタルコンテンツに希少性をもたせ、ブロックチェーン上で取り引きできるようにするというのが、NFTの基本的なコンセプトです。NFTに限らず、ブロックチェーン上で発行されるトークンの機能や当該トークンに表章される権利はさまざまです(そもそも何も表章しているとはいえない場合も考えられます)。

次に、NFTの発行とは、発行するブロックチェーンの規格に準拠して(イーサリアム・ブロックチェーン上のNFTであれば、ERC-721等の規格に準拠して)トークンを作成する行為です。これを発行者でない者に最初に移転する行為も含めて「発行」という場合もあるでしょう。たとえばアートNFTの発行場面を考えると、アート作品をもつアーティストと、そのNFTを購入するNFT購入者が存在し、それぞれが当該ブロックチェーン上のトークンに係るウォレットを有していれば、アーティストが作品を「NFT化」したうえで当該NFTを購入者に対して発行することが可能となります。

次ページNFTやその保有・移転の法的性質について
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