弁護士が解説「NFTの取引」とはいったい何なのか NFTの「保有・移転」の法的意味とは?

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もっとも、現在のNFTマーケットにおいては、NFTの発行が発行者・購入者の二者間で完結することは少なく、NFTの発行と販売を一手に担うプラットフォームが、関連当事者として無視できない存在となっています。OpenSea(オープンシー)、Rarible(ラリブル)、Nifty Gateway(ニフティ・ゲートウェイ)、SuperRare(スーパーレア)、nanakusa(ナナクサ)などのNFT専用のマーケットプレイス(オークションプラットフォーム)がその典型例です。

他方、いわゆるNFTアートの分野を中心として、これまで主にファインアートを扱ってきた伝統的なオークションハウスの参入も大きなトレンドです。

2021年3月にデジタルアーティストBeeple(ビープル)の「Everydays-The First 5000 Days」というデジタルコラージュ作品のNFTを取り扱ったChristie's(クリスティーズ)を皮切りに、同じく伝統的なオークションハウスであるSotheby's(サザビーズ)もNFTオークション事業に参入し、池田亮司氏の「A Single Number That Has 10,000,086 Digits」という作品のNFTなどの複数のアートNFTが出品されました。

NFTの一般的な発行・販売場面における当事者の関係図を示すと、図のようになります。

こうしたプラットフォームは、NFTやブロックチェーンに関する技術や知識のない者に対してもNFT発行のハードルを下げることで、いわゆるプライマリーマーケットの構築(NFT発行量の充実)に貢献しているという側面があります。これに加えて、NFTの取り引きをはじめとする利用条件・環境が技術仕様や利用規約の形であらかじめ定められていることによって、NFTの売主・買主間の個別交渉などの事務負担を減らし、いわゆるセカンダリーマーケットも活発化させていると評価することもできるでしょう。

(図:NFTの発行・販売場面における当事者の関係図)

2.NFTやその保有・移転の法的性質

ここまで、NFTの発行・販売における関係当事者とその法律関係について整理しましたが、そもそもNFTを取り引きしているというとき、法的には一体何を取り引きしているのでしょうか。とりわけ、NFT保有者が何らかの利用権を行使できる場合に、それが法的にはどのような権利に基づいて、誰に対して主張できるものであるかを考えることは、NFTに関する法律関係を安定的なものとするためにも重要です。

この問いは、一見単純なようですが、NFT自体が新しいものであり、既存の法的な枠組みの中で当然に予定されていたものではないため、「この法律だけが当然に適用される」というようなものではなく、NFTがもつ機能や技術、取引実態などを観察しながら考えないといけません。また、議論される場面によっても見え方や答えが違うということがあるでしょう。こうしたことから、さまざまな事例があるNFT全体を抽象的・一般的に議論するよりも、何かしらの具体的な事例を念頭に置いて議論した方が理解しやすいでしょう。

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