新規事業がうまくいかない人々に足りない3視点 まずはやってみないとわからないことも多い
次に、長らく見過ごされてきた困りごとに対応するケースである。
例えば新しい機能を提供する洋服が該当する。誰しも、冬はあまり厚着をしなくてもおしゃれに温かく、夏は逆におしゃれな重ね着をしても涼しくいたいと感じる。ただ、寒いときに、「おしゃれOR温かさ」、暑いときは「薄着OR涼しい」という「当たり前」に慣れすぎている。
そのため、寒いときに、薄くて温かい素材を開発することで「おしゃれAND温かさ」を、暑いときには、着ることで涼しくいられる素材を開発することで「おしゃれAND涼しい」という構図を実現できることは見過ごされがちである。このニーズに着目をし、該当するテクノロジーを適用すれば、多くの人が喜ぶものとなる。
是非チャレンジしてみたい新規性であるが、私たちは、今身の回りにあるものを当たり前と思ってしまうので、このアプローチは思うほど簡単ではない。
まずは常識を疑おう
まずは、常識を疑うところから始めるのが良い。常識を疑い、批判的な思考を進めることで、常識を壊し、長らく見過ごされてきた困りごとに対応するための思考を進めることができる。当然だと思って受け入れてきたトレードオフの関係がなくてもよいかもしれないと考えてみるのも、良い思考の出発点となる。
最後に、社会が変化する際など新しく生じたニーズに対応するケースである。
先行き不透明な時代はこのようなニーズの宝庫である。日本は東京一極集中後の少子高齢化と、共働き家庭の急速な増加などという大きな社会構造の変化の真っただ中にある。この場合、もともと想定していた社会の体系が、消費者の生活の在り方に応えきれていないということが多発する。
例えば、いま日本には、専業主婦世帯と言われる世帯がどれくらいいるか、ご存じであろうか?
データを見ると、1980年に日本では1114万世帯が専業主婦世帯であった。一方の共働き世帯は614万世帯、世帯数で専業主婦世帯の半分強しかなかった。2020年をみると、専業主婦世帯は571万世帯しかない。共働き世帯はその倍以上の、1240万世帯ある(厚生労働省「令和3年版厚生労働白書-新型コロナウイルス感染症と社会保障-」図表1-1-3 共働き等世帯数の年次推移)。日本が長く前提としていた、夫が外で働き妻は家で家事や育児に携わるという役割分担は成立しておらず、すでに、少数派ですらあるのである。
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