「立憲代表選」がちっとも盛り上がらない根本原因 テレビ局は木下富美子都議の辞職表明を優先

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そもそも、枝野氏の対応は「候補者1本化のためのぎりぎりの交渉の結果」だ。来夏の参院選に向け新たな統一候補擁立戦略でも、「1人区で自公と戦うには、あれに代わる合意はありえない」(現執行部)というのが党内の大勢だ。

もちろん、「共産の『閣外協力』という文言が独り歩きして有権者の不信を招いた」(立憲選対)のは事実。ただ「条件なしに共産党が候補者を降ろすことはありえない」(同)だけに、新代表を目指す4氏も「共産との合意見直しに踏み込めば交渉はより厳しくなり、統一候補戦略も破綻しかねない」(同)との不安から、言葉を濁さざるをえなかったとみられる。

その結果、4氏の討論はそろって及び腰の印象を振りまくことになり、「代表選の迫力不足につながった」(幹部)のが実態だ。最年長の逢坂氏は、地方の討論会などで「(今回の候補者は)みんな真面目すぎる」と肩をすくめたが、投開票日まで状況は変わりそうもない。

テレビ各局は木下都議の辞職で代表選をスルー

22日の記者クラブの討論会は、大手各紙が一定のスペースを割いて報じた。しかし、同日夕には7月の東京都議選の告示期間中などに無免許運転を繰り返したとして道路交通法違反の罪で在宅起訴された木下富美子都議が、臨時記者会見で議員辞職を表明したため、同夜のテレビニュースや翌日以降の各テレビ局の情報番組は“木下氏辞職一色”となり、代表選はほとんど取り上げられなかった。

立憲民主党内からは「枝野氏は政権交代のため、決死の覚悟で共産党との合意をまとめ、志位和夫委員長の協力も得た。しかし、今回代表選の候補者はただの仲良しクラブで、政権交代を目指す気概も見識も感じられない」(長老)との嘆き節が漏れてくる。

代表選の勝敗に直結するのはサポーターも含めたいわゆる「地方票」の行方。自民党の党員・党友よりはるかに党派色が薄いとされるだけに、「結果は予測不能」だ。このため関係者の間では「盛り上がりの無さが低投票率につながり、しかもその結果が議員投票に影響する事態となれば、代表選のあり方自体が問われかねない」との危機感も広がっている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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