小学生で「自殺未遂繰り返す母」介護した彼の悲壮 全貌が見えていない「若者ケアラー」のリアル

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Bさんは現在30代後半。20代から現在に至るまで、祖母、母と継続して介護してきた。

「うちは祖父母と母と私の3世代世帯でした。大学在学中に祖母が認知症になり3年ほどして他界、後を追うように祖父も亡くなりました。そこから経済的に立ち行かなくなり、生活保護を経験しました。生活保護を抜け出した後も、何とか立て直そうと20代後半で営業の仕事をしている最中に、今度は母が指定難病である前頭側頭型認知症になったんです」

前頭側頭型認知症は、同じ行動や言葉を繰り返すほか、万引きなど反社会的な行動が表れることもある。

Bさんの母親にしても、大声を出す、徘徊する、暴れるなどの行動を繰り返し、警察のお世話になったことが100回以上あるという。コロナ禍においては、マスクをつけようとすると逆上するため、出入り禁止になる施設もあった。

入れる介護施設がない

「母を介護施設に入れようと試行錯誤したのですが、この症状のせいで入れる施設がまったくない。親戚にも見放され、頼りにできません。母は非正規の教員だったため、年金は少額で5万円ほど。財産は一切なく、私は母のために介護離職せざるをえませんでした。

ネット販売による収入と貯金を切り崩して生活するBさん(東洋経済編集部撮影)

途中からネットで物を売る仕事をして月10万円前後の収入を得ているのと、会社員時代の貯金を切り崩して何とかしています。この間、国や自治体から経済的な支援は1円もありませんでした」

要介護4~5に認定された要介護者を介護する家族などに支給される家族介護慰労金は、Bさんの住む自治体では制度として組み込まれておらず、もし存在したとしても要介護度2にとどまることから利用できない。

また、重度障害者向けに支給される特別障害者手当も、日常生活動作評価で「一部体が動かせるため」という理由で対象にならないそうだ。

市の担当者からは「お気の毒ですが、あなたのような介護者には制度が何もなく支援できない」と言われたという。

生活保護を受給する方法もあるかもしれないが、それには抵抗感がある。

「生活保護を受給すると、母がこの状況の中、定期的に窓口に申請しに行かなければいけない。受給するためには家財を手放さないといけない可能性もあります。それに仕事で稼げないのもつらいんです。仕事は精神的なよりどころになっていますし、かつて生活保護から抜け出したのに逆戻りするのも抵抗感があります。

最後の手段として精神科病院に入院させる方法もありますが、患者を閉じ込めて放置しているような病院もあると聞きます。それは私がこれまでやってきた介護を否定するようなものです」

Bさんは「早急に何とか支援してほしい」と悲痛な思いを打ち明ける。

「母は眠ることなく徘徊して騒ぎます。私も夜は1時間ほどしか眠れません。もう何年ももたないかもしれない」

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