では、なぜ5年生にこれらの内容が配分されているかというと、高校卒業までに数学3と数学Cが終わるというゴールがまずあり、それに間に合うように配分しているからです。つまり、全体の達成目標が大前提としてあり、それを小学1年生から高校3年生までの12年間で達成するために、「○年生ではこれとこれをやってここまで学習する必要がある」ということで配分されているのです。
さらに、それを基に教科書が作られているので、「5年生の比例は○時間」「百分率は○時間」ということも決まっています。
つまり、個々の子どもの学力とは無関係のところで、全体としての達成目標とそれを実現するためのカリキュラムがあるのです。
もちろん、国レベルの判断として、「これくらいの達成目標でないと学力の国際標準に達することができない。学力の低下は国力の低下につながるからここまでやらなければならない」という判断もあるわけです。
一斉授業は「中の下」くらいの学力層が焦点
とはいっても、個々の子どもの学力は千差万別です。例えば、5年生の比例の内容を、教科書では8時間で学習することになっていたとしても、それでは不十分な子もいます。その2倍の16時間とか、あるいはそれ以上の時間が必要な子もいるのです。逆に、2、3時間あれば充分な子もいます。
それに加えて、日本の授業は、1人の先生が最大40人の子どもたちを相手に一斉授業を行うのが基本になっています。ですから、授業は「中の下」くらいの学力層に焦点を当てて進めることが多くなります。あまりレベルを上げると、ついてこられない子が増えます。逆に、あまり下げると進度が遅れて、教科書が終わらない事態になります。
ですから、本当は2、3時間で学べる子にはつまらない授業になりますし、時間の無駄にもなります。でも、これでもついてこられない子たちはたくさんいて、彼らには個別指導が必要なのです。でも、それをしているとほかの子たちを放っておくことになり、授業が成立しなくなります。ですから、大人数の一斉授業のまま授業時間数を増やしても、わからない子はわからないまま座っている時間が増えてしまうのです。
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