今の日本に「バラマキ政策」適さないシンプルな訳 財政出動は「乗数効果」「雇用の質」基準に増やせ

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しかし、この事実を無視して、「2%のインフレ目標を達していないから、デフレだろう」という反論も受けます。

2%のインフレ目標に達していないのは事実ですが、「インフレ率が2%に達していないからデフレ」というのは暴論でしかありません。

依然デフレに陥りやすい水準にあることは事実ですが、デフレを脱却できていないというのは言いすぎです。さまざまな政治的な事情で「脱却宣言」はできていませんが、それをもって「脱却できていない」とするのは、科学的な態度ではありません。

そもそも、前回の記事(もともと失言「インフレ率2%目標」に固執する暗愚)でも説明したように、2%のインフレ目標は日本には適していないと思います。1%以下が妥当でしょう。

さらには、「賃金が上がっていないからデフレだ」と主張する人までいますが、言うまでもなく、デフレは物価指数で見るので、賃金水準でデフレを定義することはできません。

また冷静に分析すると、「デフレは100%悪いこと」と断定することもできません。高インフレ同様に、激しいデフレもよくないですが、低インフレと低デフレは別にそこまで敵視する必要はありません。特に、高齢者のように年金や貯金で生活をしている人にとって、低デフレのほうがありがたいのは言うまでもないでしょう。

「Deflation and Depression: Is there an empirical link?」(NBER、2004年)という論文では、2000年までの180年にわたる先進国17カ国のデータを分析しています。

結果、デフレになったのは73回でしたが、そのうち65回は不況ではありませんでした。デフレを伴う不況は8回しかありませんでした。

要するに、デフレだから不況という説は180年間、17カ国のデータによって否定されているのです。デフレと不況には直接的な関係はありません。問題はデフレかどうかではなく、不況かどうかです。

日本は好況でもないが不況でもない

問題3:不況でもない

短期的な視点で、コロナ禍では大きな景気刺激策が必要だという人がいますが、アメリカのコロナ不況はたった2カ月で終わりました。不況の期間としては史上最短です。

アメリカ連銀の分析によると、コロナ不況は主に供給ショック型の不況でした。例えば、お金がないから外食しなかったのではなく、外食の規制がかかっていたので、需要することができなかっただけです。

ですので供給制限が解除されれば、財政出動をしなくても、総需要の大半は自動的に戻るとされています。今のアメリカのインフレも、主に供給の制限(コストプッシュ)から発生しています。

このアメリカの例でもわかるように、今の需給ギャップの全額を財政出動で埋めようとするのは誤りです。

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