今の日本に「バラマキ政策」適さないシンプルな訳 財政出動は「乗数効果」「雇用の質」基準に増やせ

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OECDのデータによると、2020年では日本の労働参加率(15~64歳)は79.6%で、OECD38カ国中の7位、主要先進国としては最も高い水準でした。ちなみにOECDの平均は71.5%です。しかも、65歳以上の労働参加率は25.5%で世界4位でした。

デフレ不況やデフレスパイラルというのは、需要が減るのに呼応して企業が雇用を減らし、それがさらなる需要の減少につながるという悪循環が始まるものです。この場合、経済の均衡が低下して、低いレベルで安定することが問題視されます。

そのため、不況になったときに失業率が上がらないように、大胆な景気刺激策として財政出動をするという理論が政策のバックボーンになります。デフレ対策は労働生産性向上などを狙ったものではなく、なくなった需要を補填するものなのです。

しかし、日本は完全雇用に非常に近い状態ですし、これからも継続的に生産年齢人口が減ります。ですから「完全雇用を実現するために、大胆な需要対策が必要である」という理屈は、前提からして成立していないのです。

そもそも、需要が足りないことが日本経済の最大の問題点なのであれば、なぜここまで労働参加率が高いまま維持されているのでしょうか。

需要が足りなくて失業率が上昇しているのであれば、景気刺激策を打つという理屈もわかります。しかし失業率が極めて低い現状、景気刺激策は必要ないし、効果も薄いと考えられます。

日本は本当にデフレなのか?

問題2:デフレではない

「インフレ率2%目標を達成するまでは、財政出動を積極的にするべきだ」という主張の大前提は、日本がいまデフレ不況であるという理解です。実はこの大前提がそもそも間違いです。安倍政権になってから、日本経済はデフレではなくなっているのです。

デフレは、物価が全般的かつ継続的に下落することと定義されています。一部の物価が大きく下落して物価指数が下がっても、それは定義上デフレではありません。その定義に照らし合わせると、安倍政権以降はデフレではありません。

確かに、特に1998年から2002年あたりまでは議論の余地があると思います。しかし、2012年以降、デフレであるという指摘に根拠はありません。

日本だけでなく、インフレ率は多くの先進国で低下しています。そんななかで、1980年代から主要先進国のインフレ率を下回っている日本のインフレ率がデフレに近い水準まで下がっているのは日本国内の需要が足りないからだというのは、極めて視野の狭い見方だと思います。

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