今の日本に「バラマキ政策」適さないシンプルな訳 財政出動は「乗数効果」「雇用の質」基準に増やせ
バラマキ的な財政出動を主張する人は決まって、日本経済が成長しない原因は日本の消費者にお金がないことだと言います。そして、需要がないから物が売れない、だからデフレなのだと主張します。
その延長で、お金がない原因を消費税に求める人も多くいます。こういう人たちは、消費税減税や廃止を提案します。あわせて、財政出動をすれば需要が戻って、経済は成長すると強調します。しかし、なぜお金がないと言えるのか、そのエビデンスを示してもらいたいと頼んでも、出てきたことがありません。
日本は消費性向が低いですし、個人金融資産は2021年6月末時点で1992兆円と過去最高を更新しました。
企業にも内部留保が溜まりまくっているので、設備投資を増やせないはずはありません。
需要がないのではなく、日本企業が需要を発掘できていないのです。自分たちでできていないのに、政府に「その需要を作ってくれ」というのは、かなり無茶苦茶な要求です。
魅力的な商品をどんどん作っていければ、どんどん売れるに決まっています。それができていないから需要が増えていないのではないでしょうか。
需要が増えても、設備投資が増える保証はない
人間は、生きていくためには消費をしないといけませんので、そもそも個人消費が不況の原因になることは少なく、不況時には個人消費のGDPに占める比率が上がるほうが一般的です。また政府支出の対GDP比率も、不況時には経済を下支えするために高くなることが多いです。
つまり、需要が足りない主な要因は企業部門にあるのです。設備投資などの要素は個人消費に比べて、変動率が激しいとされています。当然、好景気の場合、企業の需要が増えていることが多いのです。
しかし、特に最近、個人消費の増加が経済成長のドライバーとなることが増えています。ただ、国際決済銀行が調べたところ、その持続性も回復幅も、設備投資主導の景気回復に比べて弱いと分析されています。
経済は需要と供給で成り立っています。当然、供給を増やすためには需要が増えないといけないのですが、需要が増えたからといって、供給側が必ず設備投資を増やすという保証はありません。
先ほどの図表にありましたように、事実として、今の日本でも、個人需要は増えているにもかかわらず、企業はむしろ設備投資を減らして、内部留保を増やしているのが実態です。
しかも、企業は目の前にある今の需要が増えた場合、雇用を増やすかもしれませんが、設備投資を増やすとはかぎりません。
企業は今の個人消費の持続性と、将来の需要の見込みを見て設備投資を判断をするので、政府がお金を出して需要を創出したからといって、企業がそれに応えて設備投資を増やすとは限らないからです。特に、財政が悪化すればするほど、企業は設備投資を控える傾向が確認されています。
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