今の日本に「バラマキ政策」適さないシンプルな訳 財政出動は「乗数効果」「雇用の質」基準に増やせ

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どんな経済政策でも、最大の目的は以下の2つです。

(1)雇用の量の確保
(2)雇用の質の向上

働きたい人全員に提供できる「雇用の量」と、十分な生活ができる賃金をもらえる「雇用の質」です。

ケインズ経済学は1930年代の大失業時代に生まれました。不況時に財政出動をして、完全雇用を維持することが目的だという意味において、主に雇用の量を確保するための政策です。

MMTをベースとした政策も、主に完全雇用をどう達成して維持するかをメインにしている点で同様です。

仕事の量には、財政出動などの政策で大きな影響を与えることができます。事実、アベノミクスでも、仕事の量を確保することはできました。

単なる量的景気刺激策は、失業者を減らして、経済の均衡を引き上げる効果がありますが、それを今の日本でやっても、一時的な押し上げ効果しか期待できません。人口が増加しない中で完全雇用を達成すれば、その効果は薄れます。

リフレ派は需要を増やすことによって持続的な経済成長ができると主張していますが、根本的に誤っています。量的景気刺激策は、一時的な影響しかないのです。

日本に必要なのは「雇用の質」を高める財政支出

かぎりなく完全雇用に近づいている日本の今後の課題は、雇用の量ではなく雇用の質です。賃金をいかに上げるかです。

賃金は労働生産性と労働分配率で決まります。政府は最低賃金政策などによって、ある程度労働分配率に影響を与えることが可能です。しかし、労働生産性はそう簡単に動かすことはできません。

1995年から2015年までの間に、日本の労働生産性は大きく低迷し、G7の中で最低になってしまいました。

GDPは3つの要素から構成されています。人的資本、物的資本、全要素生産性です。簡単に言うと、それぞれ「①何人が何時間働いたか」「②機械などをどれだけ使ったか」「③どれだけ賢く働いたか」を表します。

データを見れば、日本では人的資本や物的資本の伸び率は先進諸国とあまり変わらないことがわかります。

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