今の日本に「バラマキ政策」適さないシンプルな訳 財政出動は「乗数効果」「雇用の質」基準に増やせ
だから「日本はデフレ不況であるか否か」が重要なのです。デフレ不況なのであれば1.5倍の乗数効果が期待できるかもしれませんが、そうではなければそこまでの効果は期待できません。
海外の議会での財政出動の議論を見ると、乗数効果の説明と予想が当たり前のように最初に来ます。提案する有識者や官僚がそのデータを出すのです。
しかし、日本では、財政出動の議論で、乗数効果の話をあまり聞いたことがありません。リフレ派の提案にある「消費税減税」や「消費税廃止」に関しても、その乗数効果の提示はありません。ただ単に「経済は回復するでしょう」と言われるだけです。
デフレ対策は失業対策
このように、経済の状況によって、財政出動に期待できる効果はまったく異なってきます。この点を真剣に考える必要があります。
今後の財政出動を慎重にするべきか、積極的にすべきかは、第二次安倍政権以降、日本経済がデフレ不況だったのか否かによって判断するべきです。
私は、この「日本=デフレ不況」説は安倍政権以降、完全に崩壊していると考えています。時代遅れなのです。
まず、ケインズ経済学の財政出動論は、失業率が大きく上がっている経済情勢にどう対応するかを基本としています。労働者は働きたいのに、仕事がないという状況を大前提にしているのです。
というのも、ケインズ経済学はそもそも、1930年代の大不況を解決するために作られた理屈だからです。金融政策だけではデフレ不況を解決することができないなら、政府支出によって需要を創出し、経済の均衡を高めて、雇用を増やそうという政策提案でした。
ケインズ経済学だけではなく、MMT支持派の人たちの本にも、Wikipediaの「Modern Monetary Theory」という項目にも「Main strategy uses fiscal policy; running a budget deficit large enough to achieve full employment through a job guarantee.」と書いてあります。完全雇用になるまで、財政出動を行うということです。
MMTは、GDPに対する国の借金を気にしすぎて完全雇用を達成できないのは、大きな機会損失であると論じているのです。MMTでは、借金のGDP比率は本来気にする必要はないので、すべての資源が最大限活用されるまで財政出動をするべきだと指摘しています。
なお、資源が最大限まで活用されるようになれば、GDPは大きく増えて、結果として財政は健全化するとされていますが、これはもっともな話です。
しかし、現在の日本の労働参加率は史上最高、かつ世界最高水準になっています。
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