今の日本に「バラマキ政策」適さないシンプルな訳 財政出動は「乗数効果」「雇用の質」基準に増やせ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

もう少し長期的に考えると、安倍政権になってからは、定義上、不況ではありません。

不況は、かつては「2四半期連続のGDPマイナス成長」と定義されていました。今は、GDP成長率、実質賃金の動向、失業率の動向、生産量の動向、卸・小売の動向などを総合的に判断して決めます。経済成長の低迷が特定の業種に限定されているのか、また経済全体に悪影響が及んでいるかどうかも重要なポイントです。

この指標をベースにして安倍政権以降の経済の実績を見ると、主に賃金を見れば好景気とは言えませんが、生産量、GDP、雇用、消費総額の動向を見れば、不況ではないと断言できます。不況ではなく「低景気」と言うべきでしょうか。

どの経済学の論文を見ても、不況のときは財政出動の効果が大きくなると確認されていますが、不況ではないときはその効果が薄れるとされています。

このように不況でない以上は、量的景気刺激のための財政出動は慎重に考えるべきなのです。

個人消費は増えている

問題4:デフレギャップも理屈にならない

デフレギャップが大きいので、デフレだと言われることもあります。しかし、デフレとデフレギャップは別々の概念なので、デフレギャップが大きくてもデフレにならなかった例は数多くあります。

理屈上、デフレギャップは、輸出の減少や設備投資の減少、個人消費の需要の減少によって拡大するとともに、それまでの成長率を下回ることによっても拡大します。

日本は1994年から2019年まで、個人消費は増えていますが、輸出と設備投資は減っています。これだけを見ても、個人消費が問題で、個人消費を刺激するべきだという主張は不適切です。

さらに言うと、デフレギャップのもう1つの原因は日本経済の成長が過去のトレンドを下回っていることですが、それは人口の増加トレンドが過去のトレンドを下回っているからです。

世界的に、戦後の経済成長にしめる人口増加要因は約50%と言われているので、当然、人口が増加しなくなった1995年以降の日本では、潜在成長率が下がっていると考えられます。

次ページ「お金はあるけれど買いたい物がない」
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事