台湾からの「視線」に日本が注意するべき理由 「コロナ対応」で自己肯定感を強める「台湾」

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他方、台湾における日本論でやや困ることに、例えば日本の政治家を見るときに「親中」か「親台」かなどというレッテルばりがしばしばなされるということがある。また、日本は中国に配慮ばかりしている、という声もある。これは、台湾の中でも依然「中国か台湾か」という枠組みが残されていることを示している。日本側としても、粘り強く日本の事情を台湾社会に説明していくことが必要だろう。

単純でない中台関係

中国は2049年に「中華民族の偉大なる復興」を遂げ、台湾統一も成し遂げるとしている。周知のとおり、昨今、中国は台湾統一にむけての軍事装備を着々と整備し、また台湾周辺での軍事活動を強化している。また、ミサイル攻撃能力だけでなく、台湾東部海岸上陸のための揚陸艇も保有しようとしている。「台湾有事」が迫っているように感じられるのはこうした状況による。

ただ、言葉のレベルでは中国首脳の台湾をめぐる言論は、昨今やや緩和され、中国は台湾社会に中国統一を望む勢力を作っていくというように、台湾社会への浸透政策を強調している。2049年に設定する「夢の実現」に際して、中華民族の一員である台湾の人々もそれを祝福するというのが中国の建前だ。それだけに夢を共有する台湾人を増やしたいというのだろう。無論、台湾社会の対中感情は極めて悪く、それは決して容易ではない。夢を共に祝う台湾人の養成ということもまた1つの「夢」だろう。

しかし、中国が台湾社会への浸透政策や、福建省と台湾との融合政策を進めることなどにまったく理由がないというのでもない。例えば、TSMCなどはハイテクの面で中国との間でデカップリングをしたが、半導体産業に関わる台湾企業でも中国と深い関係のある企業が少なくないし、台湾経済にとって中国経済は依然極めて重要だ。TSMCも低技術の製品の工場を中国にもつ。台湾で暮らす中国人も増加しているし、台湾のメディアにも少なからず中国系の資本が入っている。台湾におけるチャイナ・ファクターは今後も増していくだろう。

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