「日の丸半導体」復活には5兆円投じる覚悟必要 富士通・元半導体部門トップが直言(後編)
――経済安全保障の観点から最先端の半導体工場を日本でも持とうという動きがあります。国がTSMCの工場誘致を探る動きもありますが、日本勢でやることは可能ですか。
これまで自動車向けには枯れた技術の半導体が使われていた。が、電動化や自動化で先端半導体も使うようになる。日本の自動車メーカーの半導体調達における地政学リスクをヘッジするなら、TSMCと同じくらいの最先端工場を日本に造らないといけない。
国が支援するとしたら2000億円規模では話にならない。国が年間5000億円を10年間出すと言えば、どこかが名乗りを上げるかもしれない。ただ、経済産業省が資金を出すと言っても、実際は大企業に「裏書きしろ」と言ってくる。それでは無理だ。5000億円を10年間、5兆円をドブに捨てる覚悟で誰かに賭けるしかない。
――資金力はともかく先端半導体を製造する技術を持つ企業は日本に残っていますか。
残っていない。個別で人材を集めるしかない。日本人だけではなくグローバルにだ。アメリカはサムスンやTSMCに工場を造らせようとしている。アメリカには先端半導体のマーケットがあるが、日本にはない。同じものを大量に作るという顧客がいない。スマホもない。だから誰も工場を造らない。
ファブレスで勝てない日本の弱点
――ファウンドリーのような製造での最先端が難しければ、設計専門のファブレスで強い企業を育成することはできませんか。
ファブレスの場合は、人材に加えてEDAツールも問題になる。
EDAツールとは半導体などの回路設計を自動化し支援するソフトとハードウェアだ。昔は各社で内製ツールを使っていた。このEDAツールの問題を当初イージーに考えていた。当時の富士通は先端だったから設計ルールも作っていた。
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