台湾からの「視線」に日本が注意するべき理由 「コロナ対応」で自己肯定感を強める「台湾」

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台湾意識が以前に増して強まっている台湾の人々にとって、中国と比べて評価されるということ、すなわち中国をネガとして見るから、台湾がポジとして扱われるというのは必ずしも嬉しいものではないだろう。台湾社会の感覚では、台湾は台湾、だからである。もちろん、台湾をめぐる問題が国際化されて、台湾支持が強まることや、中国批判の声が高まることは台湾にとって悪いことではない。しかし、つねに中国というフィルターを通して台湾を見ることは、逆に中国の設定する枠組みに囚われることになるという点に留意が必要だろう。

台湾から日本への視線

他方、台湾から日本はどのように見えているのか。台湾の世論調査を見ると台湾社会の日本への好感度は極めて高い。東日本大震災での日本への支援を見ればそれは明らかだ。しかし、台湾は「親日」だと決めつけることは適切ではないかもしれない。日本であればなんでもポジティブに受け入れる、などということはないからだ。例えば、福島およびその周辺地域からの食品輸入の禁止措置は現在も継続している。この背景には、台湾の人々が「食の安全」に極めて敏感であり、また原発をめぐる問題を国内問題としても極めて重視しているということがある。

また、台湾がLGBTQなどをめぐる問題についてアジアの最先端を走っているし、またTSMCに見られるように半導体技術をめぐっても世界最先端にある。彼らが日本の民主主義や自由をどう捉え、また日本の科学技術や産業競争力をどのように見ているのか、想像にかたくない。台湾から日本への厳しい視線があるかもしれない、ということは意識していくべきであろう。歴史をめぐっても、台湾社会が日本の植民地統治を肯定的に評価している面があるのは確かだが、少数ではあっても慰安婦問題を重視したり、日本統治時代を移行期正義政策(植民地統治や権威主義的統治について、過去に遡ってその人権侵害や違法行為に関する事実を明らかにし、加害者と被害者が和解し、加害者が被害者に補償していくべきだとする考え方)の対象とすべきだ、とするような声もある。

そして、「台湾有事」についても、日本がさまざまな事態を想定しようとしていることを歓迎する向きも台湾で多いし、「台湾海峡の平和と安定」について日本や他の先進国が関心を示すことを、台湾の政府も歓迎している。だが、同時に日米などが過度に台湾海峡への関心を示しすぎれば、むしろ緊張を高めるのではないかという声もある。

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