台湾からの「視線」に日本が注意するべき理由 「コロナ対応」で自己肯定感を強める「台湾」

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そして、日本でも、中国が台湾に軍事侵攻する「台湾有事」を想定したシミュレーションをする必要性などがしばしば指摘されるようになっている。もし中国が台湾に軍事侵攻したら、それは日本にとっても極めて重大な事態となろうし、邦人の救出だけでなく、さまざまな可能性を想定しておくことが必要になることは確かだ。

「中国か、台湾か」なのか

にわかに注目されている台湾だが、その台湾について考えるときに注意したい点がいくつかあると筆者は考える。

その1つが、中国と台湾とをセットにする考え方だ。中国批判が強まり、中国がネガになると、台湾がポジになり、評価が上がる、という傾向のことだ。確かに、台湾にあるのは中華民国政府であり、形式的には中国の正統政府だと主張している。台湾という国はないから、世界の9割以上の国が北京にある中華人民共和国政府を中国政府だと認識し、1割未満の国が台湾の中華民国政府を中国政府だとしている。この点では、中華人民共和国政府か中華民国政府かということが、中国か台湾かということと重なってしまうのも理解できる。

だが、かつては北京の政府も台湾政府もともに、中国政府として自らが主導する中国統一を目指していたものの、1990年代初頭以降、台湾は中国統一政策を形式的にも放棄した。中華民国は台湾にあるのであり、台湾は台湾だ、という考え方が台湾に定着している。他方、中国は台湾統一こそが悲願であり、それが中華民族の復興の象徴だとしている。

2019年の年頭、習近平が台湾の武力統一の可能性に言及すると、台湾では中国に厳しい姿勢をとる蔡英文総統への支持率が上昇に転じた。台湾の人々は、自らの生活の幸福と安定の維持継続を求めている。2019年には、中国の香港政策が強硬化し、また翌2020年のコロナ禍の中で、中国の在中台湾人の扱いなどが問題となると、台湾の人々の対中認識は一層悪化した。また、コロナに対して際立った対応を見せた台湾では、「台湾プライド」とでもいうべき自己肯定感が強まっている。

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