異業種から「葬儀社」へ転身の男性が得たやりがい どのようにして「葬儀のプロ」になったのか

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野口さんは、とくに難しい宗教・宗派ごとに異なる葬儀について、

「例えば、真言宗のお葬儀に自分が担当になったら、本山とか開祖など真言宗の知識について勉強しました。宗教・宗派ごとに1つずつ勉強し、覚えるようにしました。わからないことは先輩に聞き、自分のノートをつくりました。

仏教の葬儀は、件数が多いので、現場で経験すればある程度のことはできるようになります。しかし、神道やキリスト教の葬儀は、件数が少ないのでなかなか経験できません。そこで、会社に神道やキリスト教の葬儀が入った時には、見学に行き学ぶようにしました。

仏教式と同じように自分のノートを作り、副主任にあがって私が葬儀担当責任者として式に就く時は、そのノートを見ながら葬儀を執り行いました」

挨拶にこだわり

野口さんがこの頃、業務の中で最も重視して取り組んだのは、遺族と最初に会った時の挨拶の仕方だ。

「会社からは、ご遺族の心をしっかりつかむためには、お悔やみの言葉だけでなく、声のトーン、顔つき、目つきなども重要だと言われています。私は、自分の大切な身内が亡くなった時のような気持ちでご遺族のお気持ちをおもんぱかり、声のトーン、顔つきなどを意識しながらご挨拶するようにしました。

そうしているうちに、『この人だったら任せても大丈夫だろうな』という気持ちになったお客様の表情の変化もわかるようになりました」

こうした努力によって、野口さんは通常より早く入社から1年半で副主任に昇格した。

野口直輝さんは28歳の時に異業種から葬儀業界へ入った(写真:セレモア)

中小葬儀社では、顧客との葬儀の打ち合わせと葬儀施行は、同じ人が担当することが一般的だが、セレモアでは、打ち合わせは主任以上が担当している。

副主任は、主任に昇格するためのステップアップ期間であり、業務的には、主任が契約した葬儀施行現場が重なってしまった場合などに、主任に代わり現場責任者として葬儀を施行する。

社員、副主任、主任とでは、業務内容がまったく異なることから、主任に昇格するための社内試験がある。筆記試験と実技試験があり、後者はセレモアの役員などが顧客となったロールプレイング試験だ。この試験に合格するのは難しく、合格するまでの期間は人によって3~5年位と差がある。

野口さんは、寝る間も惜しんでの勉強やロールプレイング練習を行い、その結果、副主任に昇格してから約1年という短期間で試験に合格し、主任に昇格することができた。入社してから主任になるには、早くても3年位かかり、2年半というのは当時としては最も早かったという。

昇格した野口さんは、主任の主な仕事である葬儀の打ち合わせで、どうしたら顧客に喜んでもらえるか、顧客が望んでいることをどう形にするかなどについて考え続けた。

「得た結論は、すべての葬儀についてわが事と考え、自分の両親の葬儀だと思って相談にのってあげるようにすることでした。そうすることによって、従来以上に寄り添ってあげられるようになり、より良いご提案もできるようになりました。そして、お客様にも従来以上に喜んでいただけることを実感できるようになりました」

野口さんはまた、通夜、葬儀・告別式を滞りなく行うのは、プロとして当然のこととして、顧客が口に出さずとも、何を求めているのかということを素早く察知して、つねに先回りのサービスを行うように努めた。

「例えば、葬儀当日が故人と喪主である奥様の結婚記念日だったご遺族がいらっしゃいました。私は、そういう情報を予め得ていましたので、葬儀当日の食事の席で、『ご霊前にお供えして、乾杯なさってください』といってワインをプレゼントしました。奥様は、すごく感動されました」

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