異業種から「葬儀社」へ転身の男性が得たやりがい どのようにして「葬儀のプロ」になったのか

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主任以上になると、もう1つ重要な葬儀業務として、参列者300名以上の大型葬、社葬、合同葬(喪家と会社が合同で主催する葬儀)などの執行責任者になることがある。

セレモアではこれらの大型葬にも力を入れており、コロナ禍前では全葬儀件数のうちの10%位が大型葬だった。大型葬は葬儀を行う場所、葬儀の形、宗教・宗派、進行方法などありとあらゆる知識と経験が必要になることから「葬儀の極み」として位置付けており、主任以上であっても選ばれた人しか執行責任者になれない。

「社葬などの大型葬は、使用する式場や飾る祭壇、進行の仕方などはすべて一般の葬儀とは異なりますので、実際に現場に行って勉強するしかありません。ですから、大型葬がある時は、私も連れて行ってくださいと積極的に立候補して、現場を数多く経験して学びました」

このほか、大型葬を成功させるために重要なのは、人と人とのつながりだという。

「例えば社葬は、会社の総務、人事、秘書室などの人たちが主体ですので、その人たちとの関係性をつくることが重要です。

そのために、その会社の歴史、業種、従業員、支社がある場所など、その会社のことを事前にできるだけリサーチして、お葬儀の打ち合わせや施行に臨みます。そうしないと、うちの会社のことも知らないのかと思われ、話が前向きに進まなくなるからです」

この仕事のやりがいは?

野口さんが葬儀のプロになるために、努力してきたことなどを見てきたが、野口さんにとって、葬儀のプロとは何か。そのためにどのようなことを心がけているか、改めて質問すると、次のような答えが返ってきた。

「お客様が望まれていることを、お客様が口に出さなくても、素早く察知して、先回りのサービスができることがプロとして一番大事だと考えています。そのためには、お客様に対してつねにアンテナを張り、世間話からお葬儀の話までいろいろな話をして情報収集を行い、コミュニケーションをたくさん取るようにしています」

コミュニケーションをたくさん取るということでは、お客様に心配事などがないかこまめに電話をかける。あるいは、遺族宅に行かなければならない時には、社員や主任に任せず、自分で直接行くこともある。

セレモアでは、葬儀後にお客様アンケートをとっている。返信率は3~4割ほどだが、その大半は、感謝や褒め言葉だという。

「それらのアンケートは、葬儀を担当した人にも見せてもらえます。それを見た時に、スーッと疲れが抜けていき、この葬儀を行って良かったと思います。私が一番うれしかったのは、『うちで何かあった時は、またあなたにお願いしたい』と書かれていた時です」

また、葬儀を執り行った故人の知り合いから、「私の時も、野口さんがやってね」と声をかけられた時には、この仕事に一番やりがいを感じたそうだ。

最後に今後の抱負を尋ねると、「私たち葬儀に携わる者は、日本の良き伝統文化である葬儀を後世に残していく使命があると思いますので、そこを意識して後輩たちを指導していきたいと思っています」と語った。

今後も自己研鑽しながら葬儀の仕事と向き合い、やりがいと誇りを持って働いていくのだろう。

塚本 優 終活・葬送ジャーナリスト

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つかもと まさる / Masaru Tsukamoto

北海道出身。早稲田大学法学部卒業。時事通信社などを経て2007年、大手終活関連事業会社の鎌倉新書に入社。月刊誌の編集長を務める。2013年フリーライターとして独立。ライフエンディングステージの中で「介護・医療」と「葬儀・供養」分野を中心に取材・執筆している。ポータルサイト「シニアガイド」に「終活探訪記」を連載中。「週刊高齢者住宅新聞」などに定期寄稿。

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