相次ぐ「電車内凶行」に日本人が再認識すべき教訓 思い出される凄惨な「地下鉄サリン事件」の怖さ

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京王線の事件の8日後には、熊本県内を走っていた九州新幹線の車内で床に火をつけたとして放火未遂容疑で三宅潔容疑者(69)が現行犯逮捕されている。

「東京の京王線の車内で乗客が火をつけた事件をまねしようと思った」

「火を放って自殺しようとした」

伝わってくる供述内容からして、いずれも身勝手な動機によるものだが、乗り合わせた乗客にとってはたまったものではない。移動手段として、閉鎖された車内で多くの人々が時間と空間を共有できるのは、隣り合わせた人間が自分を襲うことはない、という暗黙の信頼があるからだ。それを裏切る卑劣な行為であることは言を俟たない。

京王線の事件の翌日には松野博一官房長官が記者会見で、国土交通省が巡回など警戒監視の徹底を鉄道事業者に指示したことを明らかにしている。防犯カメラの設置や乗客が適切に避難できる方法の確保を進めるという。しかし、それでも走行中の車内で事件が起きてしまえば、逃げ場もなく窮地に陥ることは間違いない。

地下鉄サリン事件で学んだこと

日本人は過去にも走行中の車内を狙ったさらに凄惨な事件を経験している。地下鉄サリン事件だ。

1995年3月20日午前8時過ぎ、東京都内を走行中の東京メトロ(当時は営団地下鉄)の千代田線、丸ノ内線上下線、日比谷線上下線の5路線に乗り込んだオウム真理教の信者たちが、教団で生成した化学兵器のサリンを詰め込んだ袋を車両の床に落として先の尖った傘で突き、車両内に漏出気化させた。

揮発性の高いサリンは常温で無色無臭だ。襲われる気配も感じないまま、いわば地下鉄車両を“走る毒ガス室”に変えてしまった。この事件で13人が死亡、約6300人が重軽傷を負った。サリンをまいた実行犯は2018年7月に全員に死刑が執行されている。

日本の首都の地下鉄に同時多発的に化学兵器が撒布されたことは、世界を震撼させた。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロの直後には、次は地下鉄が狙われるのではないか、と現地メディアが地下鉄サリン事件の映像を流して警告していたくらいだ。

日本人はこのときに電車は安全な場所ではないことを知ったはずだ。知ってしまった、といったほうが正確かもしれない。

事件の2日後にオウム真理教に強制捜査が入って、新宿駅の構内に青酸ガス発生装置が仕掛けられたこともあった。これ以降しばらくは駅のホームからゴミ箱が消えた。防犯カメラの数も急速に増えた。それでも走行中の電車内での事件は絶えない。

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