規制の失敗が生んだ“原油流出”という悲劇--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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 そうしたリスクと比べれば、金融危機は気楽なものだ。

投機的バブルと銀行危機は何世紀もの間、繰り返し起こっている。それは厳しいものであったが、社会は生き延びてきた。現在の世界大不況が起こる前、「今回の金融危機は今までとは違う」と思っていた人々は間違っていた。

金融危機の対処がうまくなっていないとしても、事態は必ずしも悪くはならなかったのだ。

G20の指導者は、金融システムの穴を埋める仕事を、彼らが主張するほど立派にやり遂げたわけではない。欧州諸国で財政危機が発生し、日米などで財政赤字問題が深刻化しているのは、その証拠である。BPが海底の油田の穴を埋めようとしている努力に比べれば、G20の指導者は万能であるかのように見える。

増大するエネルギー需要を満たす手段として、技術革新に頼ろうとする西欧社会に再考を迫るものがあるとすれば、それはBPの原油流出であろう。今はブームに乗り、環境問題は後回しにする戦略を採っている中国でさえ、メキシコ湾の状況に対して厳しい見方をしている。

経済学は、災害をもたらすリスクに対して大きな不確実性が存在するとき過剰に価格メカニズムに依存することは危険であると教えている。しかし残念ながら、経済学者はつねに新しいリスクを生み出す複雑なシステムの規制の仕方や、弾力的な規制機関の設立の仕方について多くを知らないのである。

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