規制の失敗が生んだ“原油流出”という悲劇--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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 しかし、今回の事件により今まで準備してきたことが無駄になってしまった。アメリカにおいて海底油田の採掘は、数十年にわたり新規開発が棚上げになっている原子力発電と同じ運命をたどるように思える。

一国で起こった危機は世界に波及し、他国でも海底油田開発計画が縮小されるかもしれない。メキシコ湾の惨状を目の当たりにしても、ブラジルは原油のためにその美しい海岸線を危険にさらすのだろうか。

石油の専門家は、海底油田の採掘は世界の原油供給のわずかなシェアを占めるだけだと主張している。しかし、環境に影響が及びやすい深海での採掘に対する懸念が大きくなっており、問題は単に石油にとどまるものではない。

最近のエネルギー分野の大きなニュースにシェールガスの開発技術のイノベーションがある。大量のシェールガスが人口密集地域の近くに埋蔵されているため、政府は資源開発とそれに伴うリスクのバランスを検討する必要がある。

自然災害と比べれば制御が容易な金融危機

複雑さ、技術、規制という基本的な問題は、他の多くの生活の領域にも及ぶ。ナノテクノロジーと人工臓器の開発は人類に非常に大きな恩恵をもたらし、新素材や医薬品、治療技術の開発が可能になっている。

しかし、“テールリスク”(非常に小さなリスクが非常に大きな災害をもたらすこと)の管理とイノベーションの間のバランスを取ることは極めて難しい。

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