「脳に直接電流を流した」彼に起こった衝撃の結果 米国で巨額投資進む「ブレインテック」の現在地

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DARPAがこうした奇妙な研究を行ったのは、アメリカの退役軍人を想定してのことだ。アフガン/イラク戦争などによる負傷で記憶障害に陥った兵士らに向けて、記憶力を取り戻す研究の一環として実施された。

しかし、この種の技術、いわゆる「ブレインテック(脳の技術)」が適用されるのは軍事用途に限らない。DARPAによる実験のベースとなった脳深部刺激療法は、パーキンソン病や重度の鬱病をはじめ広範囲の神経疾患に向けて、すでに世界全体で年間11億ドル(1200億円以上)もの市場規模に達している。

さらに「EEG(脳波)」や「EMG(筋電信号)」、あるいは「fMRI(機能的核磁気共鳴)」など本来医療用に開発された脳科学の技術が、最近ではビデオ・ゲームなどのエンターテインメント、睡眠改善のようなヘルスケア、さらには広告宣伝や購買分析、マーケティングをはじめ広範囲のビジネスに応用され、今後大きな成長が見込まれている。

ブレインテックでも事業を展開するイーロン・マスク

このように将来性豊かなブレインテックに狙いを定めて新事業を始めたのが、電気自動車メーカー「テスラ」や宇宙開発企業「スペースX」の最高経営責任者イーロン・マスク氏だ。

いわゆるシリアル・アントレプレナー(連続起業家)としても知られるマスク氏が2016年、アメリカ・サンフランシスコで立ち上げた会社がニューラリンクだ。同社はブレインテックの中でも、とくに「BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)」と呼ばれる高度技術の開発・商用化を手掛けている。

BMIとは、脳とロボット・アームやコンピューターなど各種マシン(機械)を接続し、脳から直接マシンを操作する。あるいは脳とコンピューターなどとの間で直接情報をやり取りする技術。「ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)」と呼ばれることもあるが、本稿ではBMIで統一する。

BMIには「侵襲型」と「非侵襲型」の2種類がある。

侵襲型とは手術を必要とするBMIだ。人間の頭蓋骨にドリルで穴を開け、そこから脳にスパイク信号(電気信号)の読み取り装置を装着する。これとコンピューターなどのマシンを有線または無線で接続して情報をやり取りする。

一方、非侵襲型とは手術を必要としないBMIだ。ヘルメットやゴーグルなどウエアラブル端末を頭部に被ることによって、外部から脳内のスパイク信号を読み取る。この情報をコンピューターやスマホに入力して、これらの端末を操作するのだ。

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