青森の高校生、「動物の殺処分」と向き合う

『いのちの花』を読み、生命の尊さを考える

埋葬されることのない骨を、どうにかできないか。生徒たちの思いに教師から一つの光が投げかけられた。骨を肥料にするというアイディアだ。骨を細かく砕き、肥料にして土と混ぜ、その土に花を咲かせる――「命の花プロジェクト」が生まれた。骨にレンガを振り下ろし、細かく砕く作業。動物たちを死後も傷つけるような作業は心に重い負担をかけた。骨の中から時折見つかる首輪やリードの金属片に、飼われていた日の姿を垣間見る。辛い作業が、逆に彼女たちの決意を確固たるものにしていった。

殺処分された動物の骨を、土に還してあげたい。
形は変わってしまっても、命として続いてくれますように。

小さな歩みの軌跡

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動物殺処分の問題は、今までも幾度となく取りざたされてきた。本も出版されてきた。『ペット殺処分―ドリームボックスに入れられる犬猫たち』は殺処分業務に就く動物愛護センター職員の苦悩をつづったノンフィクションとして話題になったし、ペット流通の闇を暴き法改正を巡る業者と行政の攻防を描いた『犬を殺すのは誰か―ペット流通の闇』は 社会現象を巻き起こした。

そのような本とこの本は、少し違う。問題を暴き、大きく声を上げる役割を担った本とは違い、本書は、どこにでもいる高校生が、自分たちにできることはないかと模索する、小さな歩みの軌跡だ。だがしかしそれは、小さいがゆえに、殺処分問題を知り、それに心を痛める者にとって、手を挙 げる契機となり得る。青森県内の他の高等学校との共同プロジェクトが立ち上がるなど、「命の花プロジェクト」は広がりを見せている。

昨年、このプロジェクトはいくつかのテレビ番組で取り上げられ、多くの人の感動を呼んだ。その感動を、今度はこの一冊の本が広げてくれるに違いない。広く、また長く読み継がれることで、生きるべき命がただ愛玩する人間を失ったために殺されることの不条理を、問い続けるに違いない。私たちの無責任さ が多くの動物たちの命を奪っている、しかもその処分に税金を使って。どうかこの問題に気付いてほしいと、この本の花はひたむきな輝きで訴えている。

もうすぐ夏休みも終わる。この本を特に若い学生にお勧めしたい。同じ世代の、高校生が始めたこのプロジェクトについてどう思うか、感想を聞いてみたい。もしこの本を読んだら、友達に、周りの大人に、弟や妹に、死んでいく命について話をしてみてほしい。中学生の皆さん、高校生の皆さん、そしてすべての動物を愛する大人へ、この本をこの夏最後の課題図書として推薦します。

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