「働かないのに給料がいい」人はなぜ存在するか あなたのパフォーマンスに給与は見合ってる?
さらに、もうひとつ困った問題があります。それは「給与とパフォーマンスが一致しているかどうか」を、本人が自覚するのはむずかしいことです。
リストラ候補は「人事評価が低い人」だけではありません。標準評価がAだとしたら、B評価、C評価の人だけでなく、A評価の人たちもリストラされています。
A評価でも「肩叩き」にあう人がいる
企業取材を精力的に行い、『非情の常時リストラ』(文春新書)で2013年度日本労働ペンクラブ賞を受賞した人事ジャーナリストの溝上憲文さんによると、大手や老舗企業では、A評価をもらっているのに肩叩きにあっている人が非常に多いといいます。
標準より低いB評価、C評価の人なら「頑張らないとリストラされてしまうかも」と、ある程度の覚悟はできているでしょう。でもA評価の人たちは「自分は評価されているんだ」「優秀なんだ」「会社に貢献しているんだ」と人事評価を信じています。それなのに、いきなり肩を叩かれ、クビを切られてしまうのです。
理不尽な仕打ちにショックを受け、心のケアから始めなければ再スタートできない人がとても多いといいます。なぜ、こんなことになってしまうのでしょうか?
大変残念なことですが、実は人事評価を厳密に行っている会社は多くないのです。評価基準も明確ではなく、上司の好き嫌いを含んだ主観的な評価を行っている会社がほとんど。改善点をきちんと指摘するフィードバックがなされている会社もごくわずかです。
納得できる評価制度が整った企業は、日本の会社全体の1割程度。上場企業でようやく3分の1。それが私の実感です。「給料とパフォーマンスが合っていないから、〇〇を改善してください」。もしそう言ってくれる上司がいるなら、とてもいい会社です。
厳しい指摘をしたら仲良く働けなくなるから、なあなあで評価して、いざとなったらリストラ。そういう会社が一般的なのです。
こんな状況を少しでも改善したい、評価基準を明確にし、適切なフィードバックを行い、成果や行動に応じた給与制度にして、不幸を生むリストラを減らしたい。私が人事コンサルタントとして起業を志したのも、そんな危機感を持ったからでした。
45歳以上の希望退職・早期退職でリストラされてしまった人は、古い体質の人事制度を見直してこなかった日本社会の犠牲者ともいえるのです。
最近は年功序列を廃止する企業も増えてきましたが、社会全体が変わるには、まだまだ時間がかかります。45歳以上の人たちは、リストラされないように、あるいはリストラされても、しっかりと生きていけるように自衛策を講じる必要があります。
たとえ人事評価が高くても、真に受けてはいけません。高い評価をもらっていても、リストラされることはあるのです。
では、会社の人事評価がアテにならないとしたら、自分の年収がパフォーマンスと一致しているかどうかを、どのように判断したらいいのでしょうか?
これには、2つの方法があります。ひとつは、転職活動をしてみること。実際に転職しなくてもいいのです。人材紹介会社に登録して「私は年収700万円なんですけど、同じ年収で転職先は見つかりますか?」と、コーディネーターに聞いてみてください。
適切な年収をコーディネーターが判断できるかどうかは、その人の力量次第ですが、紹介が来るかどうかで、自分の市場価値を知ることができます。年収700万円を提示する企業の紹介が来れば、あなたには700万の市場価値があるということです。