指示命令ない組織を夢見る人に知ってほしい現実 ティール組織への憧れには不都合な真実が見える

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つまり、組織が生き残ることが大義名分であり、それを信じるからこそ、私たちは自由と平等を、マネージャーやリーダーに対して差し出しているのである。しかし、どうだろう。それで本当に組織が生き残ることができるのだろうか。マネージャーやリーダーの采配には、それだけの価値があるのだろうか。その効果測定は、いったい誰が行っているのだろう。あなたが受け取っている、自由と平等を差し出すことの対価は、果たして十分なものだろうか。

私たちは、民主主義社会に生きていることになっている。しかしその日常は、マネージャーやリーダーに特権が与えられる組織という独裁政権の中で、多くの我慢を強いられている。そこでもし、ティール組織でも生き残れるとするなら、どうだろう。私たちの自由と平等は奪われることなく、今と同じか、それ以上の対価が得られる。それによって、本当の民主主義が実現される。個人の自由と平等が保証される社会が、建前ではなく本音で実現される。なんという理想だろう。

理想ではあってもたどり着けない

実は、そんな理想が実現されていた長い時代がある。ティール組織への注目は、その時代へのノスタルジー(懐かしく感じること)であると理解すれば、ティール組織を実際に運用することの困難も見えやすくなる。ティール組織は、理想ではあっても(簡単には)辿り着けない理想である。なぜなら、私たち人間の発展は、その理想を捨てたことで成し遂げられてきたものだからだ。

そうして捨てられた理想とは、狩猟採集社会である。現代でも先住民として観察される狩猟採集社会は、20万年も持続してきた社会である。そして、狩猟採集社会は明確なリーダーを持たないことも分かっている。実際に、世界各地の186の社会を調査した結果、狩猟採集社会の80%は明確なリーダーを持たない非階層社会であった。これに対して農耕社会の75%は、特定のリーダーによって統治されていた。

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