「絶対に管理職にしてはいけない社員」5つの条件 部下から見た「今すぐ降りてほしい管理職」とは

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なぜ日本企業では、不適格な管理職が多いのでしょうか。今後、不適格な管理職は企業からいなくなるのでしょうか。

日本企業で不適格な管理職が多いのは、職能資格制度の影響が大きいとされます。職能資格制度とは、職務遂行能力によって社員をいくつかの等級に分類し、賃金を管理する仕組みです。1960年代の高度成長期に普及し、現在、大手企業の7割以上が採用しているとされます。

ここで多くの日本企業は、勤続年数が増えるとともに能力(熟練)が上がっていくという想定で制度を設計し、年次が上がると自動的に昇格するなど勤続年数や年次をベースに運用しています。本来は能力を評価する制度なのに、事実上「38歳になったらそろそろ課長」といった年功序列制になっているのです。

「ジョブ型雇用」で不適格な管理職はどうなる?

では、今後、企業が職能資格制度から「ジョブ型雇用」に転換したら、不適格な管理職はいなくなるでしょうか。ジョブ型雇用とは、職務を明確に定義して職務を担う社員を割り当てて、職務の難易度や責任の大きさなどに応じて賃金を払う仕組みです。日立製作所・富士通・KDDIなど大手企業が相次いでジョブ型雇用を導入し、注目を集めています。

ジョブ型雇用では、職務の難易度などに応じた職務等級制度を作ります。ジョブ型雇用での昇進は、より高い等級の職務を担う者を決めることです。理論上、ある年齢になったら管理職に昇進するということは「あり得ない」とされます。

ただし、職能資格制度にも同じような理屈が当てはまります。職能資格制度は、能力に応じて資格が上がる仕組みだから、能力の低い者が長く勤続しているというだけで昇格・昇進することは「あり得ない」はずですが……。

「当社では2年前にジョブ型雇用に切り替えましたが、まだ不適格な管理職がたくさんいます。ある等級の職務を誰に割り当てるかを決める際、個人の能力の評価を最重要の基準にしています。ただ、管理職に必要な能力を定義し、評価するのは難しく、勤続年数の長い社員が能力を高く評価され、高い等級の職務を担っています。結局、年功序列のままということです」(機械・社長)

つまり、ジョブ型雇用を導入すれば不適格な管理職が自動的にいなくなるというのは、幻想にすぎません。職能資格制度を続けるにせよ、ジョブ型雇用を導入するにせよ、不適格な管理職がいなくなるかどうかは、制度をどこまで厳格に設計・運用するかにかかっているのです。

個人的な予想としては、今後も職能資格制度を続ける企業が多く、ジョブ型雇用は職務の定義など設計・運用が難しいので、制度面から年功序列が大きく崩れることはないでしょう。ただ、日本企業には余剰人員を抱える余裕がなくなっており、リストラで不適格な管理職を排除する動きは今後さらに加速します。10年後には「不適格な管理職がいる」という企業は少数派になっていることでしょう。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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