北総線の運賃値下げ、一体いくらが適切なのか 財源確保に、国や県のイニシアティブを期待

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また、高額運賃を承知で移住したという指摘も、初期からの住民には当てはまらない。北総線は第1期線として千葉NT内の交通路整備が優先され、千葉NTと東京都心を結ぶことを目指して1983年に第2期線の建設が行われた。これ以降、下表のように値上げが度々行われ、今日の高額運賃となった。

さらに、千葉県、URの計画に誤算が生じた。千葉NT(1966年事業開始)は、当初の計画では2912haを開発して計画人口34万人を見込んでいたが、1970年代のオイルショックや1990年代のバブル崩壊などで縮小を余儀なくされた。実際の人口は約9万人にとどまっている。この失敗については、オイルショックやバブル崩壊などの社会的な要因が多いが、同時期に多摩NT(1965年)、港北NT(1965年)などが事業を開始している。千葉NTの失敗は社会情勢だけが要因とは言えず、千葉県、URの責任は大きい。高額運賃である最大の理由は多額の債務にある。資本金249億円の北総鉄道(旧・北総開発鉄道)は2期区間の施工により、鉄道・運輸機構に対して1141億円という債務を負った。この巨額債務の元利返済を続けてきた。鉄道会社への公的支援としては、出資のほか、無利子や低利融資なども行われているが、公的資金が多く入る千葉県内を通るつくばエクスプレスと比べて、北総への公的支援は不十分であった。

気になる値下げ幅

気になるのは値下げ幅だ。以下の3要素に分けて原資を考える

1.累積損失解消に伴う財源

北総鉄道の値下げ検討の表明はこの点による。2020年度北総鉄道の決算では、経常利益18億円、純利益12億円を計上している。

このことから12億円程度を値下げの財源にするのではとの予想がある。北総はメディアに対して「通学定期の大幅値下げなどにより、沿線内への居住促進にもつなげていきたい」とコメントしている。通学定期は会社員には手当が出る通勤定期と違って、子育て労働者世帯の家計を直撃する問題であり、過去にも京成本線の3倍以上という高額のため、沿線自治体等の財政支援で値下げしてきた経緯がある。したがって、通学定期の大幅値下げを目玉にすることがうかがえる。仮に50%ほど値下げしてもその原資は4億円で済み、残り8億円を普通運賃や通勤定期券値下げ原資とするとその値下げ幅は10%ほどにしかならないとみられる。

2020年度の北総決算では、コロナ禍で旅客運輸収入が95億円と対前年度(127億円)比32億円減(25%減)となっており、経常利益18億円、純利益12億円を計上しているが、このことは通常年度で考えた場合、運賃を25%引き下げたと同じ意味を持つ。つまり、「2020年度決算では、今の利益を確保しつつ25%の値下げができることを証明している」と北実会は言う。

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