北総線の運賃値下げ、一体いくらが適切なのか 財源確保に、国や県のイニシアティブを期待

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さらに、2004年に小泉改革でURが鉄道事業を廃止したときに、京成がURから鉄道事業を150億円(時価評価額193億円。千葉県が43億円負担)で取得したが、北実会は、京成がその受け皿としてCNRを設立した際の資金調達を問題視する。CNRの資本をわずか1000万円という過小にして京成から150億円の借金をさせ、利率2%という高い利息を取っていることが、CNRの赤字が解消されていない要因だと批判する。2019年度の決算では、借入金残高は約92億円、支払利息約2億3千万円になっているという。

仮に北総がCNRに支払う線路使用料を半額にできれば12億円ほどの値下げ原資となるが、京成が支配する現在のスキームのなかでその是正は困難が予想される。だが、最近注目すべき動きがあった。北総鉄道の室谷正裕社長は従来、京成の取締役であり、CNRの社長でもあったのだが、今年6月の株主総会で京成の取締役を解かれ、CNRの社長職も解かれている。これが値下げ検討の本気度を示すものなのか注目だ。

筆者はかつて内閣府消費者委員会委員を務め、公共料金問題について国土交通大臣等に建議を出した。その際、国交省鉄道局の担当者と議論していて感じたのは、「民間の事業だから、国は基本的に口をはさめない」という態度だ。著しく不当でない限り事業者の自由裁量という立場で認可を与える。一方、鉄道事業者は国から認可されたことをもって正当性を主張し、核心の情報は開示しない。そこで消費者が司法の場で不当性を訴えても、裁判所もまた原告適格なしとして門前払いしたり、行政は正しいものとの前提で判決を下す。結果、消費者は蚊帳の外だ。

そこで政治による解決が期待されるが、業界に組織票を頼る保守政党ははじめから頼りにならず、生活者本位を標榜する野党は聞こえのよいことを唱えるが、労組を組織票としている場合、日本の労組の多くが企業内労組であることから、労働者の利益=企業の利益となり、結局頼りにならない。

キーパーソンは斉藤国交大臣と熊谷千葉県知事

岸田政権で斉藤鉄夫衆議院議員(公明党)が国交大臣となった。斉藤議員は自称「鉄道マニア」であり、北総問題に関心を持ち、過去にたびたび衆議院の委員会で政府に高額運賃解消を求めてきた。イニシアティブを期待したい。

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今年3月の千葉県知事選で千葉市長であった熊谷俊人氏が知事に当選した。熊谷氏は選挙期間中から関心を示し、知事就任後も、北総沿線で重要な課題は北総線高運賃問題とし、改善に向けた努力をしなければならないと述べている。今まで、わずかだが北総の株を持つ印西市の板倉正直市長が株主として北総に線路使用料などの問題点を質してきた。しかし、私企業間のプライベートな契約内容であるという理由で肝心の部分は情報が開示されていない。

千葉県は北総の株式22.28%を持つ大株主だ。県民の利益を代表する千葉県熊谷知事は北総の契約情報を明らかにし、利益を確保することを北総に求め、沿線住民の高額運賃負担を解消すべきだ。熊谷知事の市民政治家としての意思と力量が問われている。

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