中国人が日本で爆買い「海の黒いダイヤ」の正体 日本人はあまり口にする機会のない国産食材
水産資源としてのなまこの状況はどうなっているか。年間生産量は6100トン(2020年)で、北海道2300トン、青森県800トン、山口県500トンなどとなっている。1968年には全国で1万3000トンの水揚げがあったから半減したことになる。漁期は3-8月。ケタ網を曳いて漁獲する方法が主流だが、潜水漁にこだわっている地域もある。
青森県の陸奥湾に面した横浜町は歴史的にもっとも古い漁師町の一つ。江戸時代からなまこ漁を行い、現在は資源保護のため12月末の数日間しか漁を行っていない。2015年には、なまことしては全国で初となる地域団体商標に登録された。その「横浜なまこ」は、当地のお正月料理には欠かせない逸品だ。
最大の産地・北海道では十勝、釧路を除くほぼ全域に分布している。そうしたなか、最近注目されているのが道南・檜山地域の「檜山海参」(ひやまハイシェン)だ。檜山地域の海面で漁獲されたなまこを同地域で加工した干しなまこだ。
この地では江戸時代には俵物として出荷していた。函館市史によると、延享元年(1744)の松前産の煎海鼠の買い入れ状況が記されている。総量7577貫(約28.4トン)のうち江差(檜山地域)は1268貫(4.75トン)となっている。
過剰漁獲の苦い経験も
そんな歴史ある産地のひやま漁協乙部支所では、かつて過剰漁獲でなまこ資源を激減させてしまった苦い経験がある。そこで2003年以降はケタ網漁を止めて潜水漁に切り替え、その後、種苗放流を始めた。
漁協をあげて資源回復に取り組む一方で、2016年から乾燥なまこの試作品作りに着手した。翌年度から事業化を目的とした生産を始め、フリーズドライ製品の開発を進めていた、ひやま漁協江差支所と連携。檜山沿岸で素潜りで獲ったなまこを「檜山ナマコ」、それを漁業者自ら加工した商品を「檜山海参」と定義づけ、2018年度に商標登録した。
そして2020年3月には国の「地理的表示(GI)保護制度」で保護される産品として登録された。「檜山海参」の2019年度の生産量は100㎏、生産額は2300万円と、まだまだ規模は小さいが、ケタ網ではなく潜水手採りによることで、個体の状態の良さが維持されているうえ、水戻し後の品質の高さ(肉厚で身崩れせず、適度な粘りと弾力を持った食感)も支持され、中国料理で価値の高い「刺参(ツーシェン)として高い評価を得ている。水揚げ地で取り引きされる値段は全国トップクラスで、今年はキロ8000円の高値がついたという。
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