中国人が日本で爆買い「海の黒いダイヤ」の正体 日本人はあまり口にする機会のない国産食材
海から水揚げされたなまこを乾燥させた「干しなまこ」は、中国では「海参(ハイシェン)」と呼ばれ、高級食材として知られる存在だ。水揚げしたなまこを加工する工程は「脱腸」→「一番煮」→「一次乾燥」→「二番煮」→「二次乾燥」などで、高級品になると数十日かかるという。
干しなまこの輸出には、実は古い歴史がある。江戸時代、「煎海鼠」(いりこ)と呼ばれた干しなまこは、干し鮑、ふかひれとともに「俵物三品」として中国(当時の清)に輸出されていたから、食材輸出の歴史は300年以上になる。
歴史関連の書物には、古くは三国時代から食されていたとの記述もあるというが、料理としてメジャーになるのは明代(1368-1644)になってからだ。明の第14代皇帝・万暦帝(ばんれきてい)が、海参、鮑、ふかひれなどを一緒に煮込んだ料理を好んだ。それ以来、高級食材となったという。
日本からの輸出が始まったのは、清朝になってからで、乾隆帝(第6代皇帝・1735-1796)の時代であると言われている。当時の著名な詩人、袁枚が記した中国料理書のバイブル『隨園食単』(1792年)には「海参の煮方三種」が紹介されている。
<まず水に浸して沙や泥を去り、肉の汁で滾泡すること三度、鶏と豚肉と両様の汁を用い、醤油をさして、とろけるほどに煮込む>(岩波文庫=青木正児訳註より)
なるほど。料理のイメージが湧いてくる描写である。
現在は、上海料理の蝦子海参(シャァズハイシェン)、北京料理の葱焼海参(ツォンシャオハイシェン)をはじめ、広東料理、四川料理などにもそれぞれ独自の調理法でつくられた海参料理がある。
中国国内ではここ数年、日本酒など高級輸入食品のECビジネス(ネット販売)が人気化しているが、なまこも例外ではない。中国最大のショッピングサイト「淘宝網」(アリババ傘下)で「海参」を検索すると600件以上の商品が表示されてきた。価格はピンからキリまでさまざま。「日本野生海参」は500gで7999元(約14万円)と結構な価格である。安いものは「天然野生」で500g95元(約1700円)だった。
「海参」という名前の由来は「海の朝鮮人参」。実は朝鮮人参と同じくサポニンという成分を含み、健康増進や美容面での効能が指摘されている。レストランや家庭での食用以外の活用法を見ると、国内では健康食品や石鹸などが販売されている。マレーシアでは「なまこ石鹸」が人気の土産品となっていて、現地の高級ホテルのスパでも「なまこ石鹸」が使われているという。
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