部活で起きる「男子への性的暴行」知られざる問題 男性が性被害を言い出しづらい5つの理由

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3つめは、男性は被害に遭わないという社会の思い込みがある。なぜなら、学校現場での女子への性被害は日常的に報道される。例えば9月には、兵庫の県立高校で顧問を務める部活動の女子生徒にわいせつな行為をしたとして、30代の男性臨時講師が懲戒免職にされた。また、沖縄県那覇市立の中学校内で、部活動の副顧問だった40代男性教諭からキスをされるなどわいせつ行為を受けた当時3年の女子生徒が後に自ら命を絶っていたという報道も記憶に新しい。

わいせつ行為やセクハラで2019年度に懲戒処分を受けた公立の小中高校などの教員は273人と、過去2番目に多い。文科省は、児童生徒に対するわいせつ行為は原則として懲戒免職とするよう各教育委員会に指導している。

被害児童生徒の男女の比率は不明だ。高峰教授は「女子が圧倒的に多いと思うが、学校の男性教員が男子児童にわいせつ行為を行ったという報道は少なくない。表面化している男子への性虐待は、氷山の一角ではないか」と言う。

思えば、#MeToo運動を機にカミングアウトしたり、賛同する声をあげるのは女性が多い。被害男性たちの「僕も」は一部で報道されたものの、特異なケースと思われがちだ。

保護者世代の性へのタブー視がある

4つめは、保護者世代の性へのタブー視だ。そもそも性についてオープンな会話があまりなされない土壌のため、息子への性被害を予測している保護者は少ないだろう。したがって被害男子が、親の混乱を思って口をつぐむことも考えられる。女子生徒が母親に訴え、母親も率先して救うケースはあるが、異性の母親には言いづらい。そのうえ、同性の父親には「男らしさ」を求められて育つことのほうが多いため、打ち明けづらいだろう。

これに対し高峰教授も「保護者の影響は、確かにある。性虐待を予防するためにも、男らしさにこだわらず、自分の子どもも被害に合うかもしれないという可能性を考えてほしい。また、日ごろから『何があっても君の味方だ』ということを伝えることが大切」と話す。

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