「人力車に人生を変えられた」38歳芸人の紆余曲折 犬山市が観光都市として復活できた意外な理由

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一方、「お笑い人力車」の成功で、犬山市観光協会には、各地の自治体や観光協会からの問い合わせが殺到したという。再び後藤が語る。

「それこそ、問い合わせは全国から。実際に幹部が視察に来られた自治体さんもありました。なかには『吉本と組んで大丈夫なのか?』『吉本にいくら払っているんだ?』なんていう問い合わせもありました(笑)。実際はほとんど払ってないんですけどね。

当時は行政側にも、吉本さんに対する偏見みたいなものがあって、問い合わせてくるのはいいけど、いざ組むとなると二の足を踏む自治体さんも少なくありませんでした」

それでも、岐阜県美濃市や島根県松江市など、犬山に倣って観光ガイドなどに住みます芸人を起用する自治体が相次ぎ、2017年からは香川県の丸亀城でもお笑い人力車が始まった。

「犬山といえば人力車」は定着したが…

だが、その“元祖”となった犬山にも悩みがなかったわけではない。後藤が続ける。

「この10年で、『犬山といえば人力車』と、すっかり定着しましたし、これで若い人が来てくれるようになり、さらには、その若い人向けの新たなコンテンツが地元で生まれる――という好循環が続いているので、吉本さんには大変な恩義を感じているんです。きっかけを作ってくれたことはもちろん、10年もの間、芸人さんたちを犬山に送り続けてくれたことに。

けれども、一方の吉本さんにとってはどうだったのかな、と。

10年も続けていると、どうしてもマンネリ化してしまいますし、残念ながら、最初のサムタイムズ以上に地元に溶け込んだ子がいない。なかにはアルバイト感覚で曳いてた子もいましたし。それは、ちょっと違うんじゃないか、と。

彼らにはやはり、『芸人』であることを忘れてほしくないんですよね。せっかくのチャンスなんだから、1人でも多くのお客さんに顔を覚えてもらって、芸人としてのスキルを磨いて、せめて『愛知県では知られるタレント』ぐらいにはなって欲しいと思っているんです」

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